★Abuslave-性妖精たちの鎮魂歌-
□第T章 ミュゼルの血
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奴隷は、主人無しでは生きていけない。
だが言い換えれば、主人の機嫌ひとつで死さえも操られている。
残虐な双子として知られているジニアル家の跡継ぎは、それこそ遊び半分で奴隷を入れ換えるクセを持っていた。
「見たところ、十くらいか?」
血のように赤い液体が入ったグラスを傾けるついでに、クランはムーアとムーイに声をかける。
刹那、双子は嬉しそうに声をそろえた。
「「そっ。今夜は貫通式だよ。」」
「そうか。」
たった一言。
意気揚々と自分達の奴隷自慢をしたムーアとムーイには、クランの態度は面白くない反応だったに違いない。
「ヒャアッ!?」
まだあどけなさの残る幼女。いや、膨らみを見せ始めた胸からすると少女というべきか……とにかく、その娘をムーアとムーイは両脇から抱えあげてクランの前に差し出した。
「「ほら、足を開きなよ。」」
まだ毛も生えていないような無垢な身体を双子は容赦なく開かせる。
汚れを知らない乙女。
「内密に仕入れたんだよ。」
「欠損のないミュゼルって珍しいでしょ?」
「しかも純血。」
「かもしれない。」
長年の虐待から、その血を圧倒的に減らしたミュゼルたちは、もはや希少価値の高い種族になっていた。
容赦なく捕らわれ、幼少期から奴隷として飼われ、殺され、運よく子をなしたとしても、それは主人に種付けられた混血にすぎない。
混血児はやはり純血に負ける。
だが、ミュゼルの血を少しでも引いていれば奴隷として扱われる現代。
混血児でさえ、高値で取引される貴族たちの玩具という時代。
「「どう?」」
大枚をはたいてでも手に入れたい奴隷。
そう表現できる純白に近いミュゼルを前にしても、クランの興味は惹き付けられないと悟ったらしい。
「もういい。行こムーイ。」
「そうだね。ムーア。」
「「またね、クラン。」」
いまいち盛り上がりにかけるとふてくされながらも、双子は満面の笑みで少女を抱えたままいってしまった。
向かう先は、もちろん台座。
すりばち状にもうけられたコロッセオの中心に、双子は今夜のメインを連れていく。
「悪趣味だな。」
ボソッとクランがつぶやいた。
なぜなら、完全な姿を保っているミュゼルの少女自体珍しいことにくわえ、純血かもしれないという噂が集まった人々を熱気に沸かせていた。
「純血の歌声は格別じゃからのぉ。」
片目を包帯で巻き付けられたミュゼルを膝の上においた老人が、その長い髭をなでつける。
隣では、太った婦人が首輪をはめた3人の少年をつれている。
「純血同士の結合を拝めるなんて、大金をはたいてきた甲斐があるざます。」
「ほんとうに。」
その内の1人と話し相手が連れてきていた少女を無理矢理交尾させているが、太った婦人も話し相手となっている紳士もコロッセオの中心で開催される光景を眺めながらペロリと舌なめずっていた。
「シエラ様が飼っておられるシュアという純血は、いつ見ても美しいざます。」
「ミュゼルの純血の美しさは、われら悪魔の血をひくサディス族との間に生まれた混血児とは違いますからな。」
「ああ、あの白い肌に噛みついて、その赤い血を飲み干したいざます。」
「それはいいですな。わたしも本物のミュゼルの血を一度飲んでみたい。」
お互いの奴隷たちが足元で苦しむ声をあげているというのに、欲に目がくらんだ貴婦人や紳士たちは、そろって口から牙をのぞかせている。
異様だが、普通の光景。
そんな人々を見下ろすようにして、クランは一番高い場所にいた。
「ミュゼルの純血か。」
クスリと漏れた笑いは何を意味するのか、この会場の中で最も高貴とされるサディスティナ家の当主にその真意を尋ねるものは存在しない。
そしてその視線の先では、赤い鮮血をしたたらせた少女の貫通式が無事に執り行われていた。
「ヤメ…ッ…痛い…アアアッ」
純血かもしれないミュゼルの歌声が、コロッセオに響き渡る。
「アハハ、シュアくんのが入ってくよ〜。」
「おっきいのが埋まっちゃっう〜。」
はやしたるムーアとムーイが見守る先では、破丘(ハキュウ)の痛みに泣き叫ぶ少女の膣に、異人たちがシュアのものを突き刺そうとしていた。
「…ッく……」
強引に交わらされる相手が、まだ男を知らない幼女だと性器にまとわりついてくる感覚でわかるのか、シュアが必死の抵抗をみせ始める。
が、四肢を拘束された身。
「シュアくん無駄無駄ぁ〜。」
「今から一気に貫かせてあげる。」
楽しくて仕方がないといったムーアとムーイが何かをつぶやくなり、可憐な乙女をシュアに突き刺そうとしていた全身マントの異人たちは、いっきに力を込め始めた。
刹那、高貴な一族たちが見下ろす中心で、少女はその時をむかえる。