★魔力という名の免罪符

□第一章:魔力なんかいらない
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第一章:魔力なんかいらない
《第一話:美形でも許せない》

ここに拷問器具があれば、中世の魔女狩りの話を連想させる場所だと思った。
石造りの塔に設けられた牢の一室で目を覚ました麻祐は、目を開けた先にいる三人の美形と、窓が一つしかない鉄格子の部屋にいる現実に、また意識を失いそうになる。


「そなた、名は何という。」


ここまで運んでくれたらしいラルドの問いかけに麻祐は泣きたくなる気持ちをおさえて「麻祐」と名乗った。


「見慣れぬ服を着ているがどこから来た。」

「ぅ。」


聞かれても答えられない質問が二つ目に来るとは思っていなかっただけに、麻祐は返答に困って小さくうつむく。


「聞こえてねぇわけ、ねぇよな?」


ふむとまた顎に手を添えて思案する素振りを見せたラルドとは別の、まだ若い青年が麻祐の顔を覗き込むように問いかけてくる。


「答えねぇなぁ。魔力切れっすかね?」

「それはどうでしょうね。」


うつむいたまま答えない麻祐の様子に疑問を持った彼は、残る一人に振り返りながら問いかける。また別の繊細な美形がラルド同様、顎に手を添えて見つめてきた。


「麻祐さん。」

「はっはい。」

「魔力を補給したのはいつが最後ですか?」


答えられない三つ目の問いかけに、麻祐は困惑する。
魔力を補給するということは、魔法を使うということ。当然だが麻祐は魔法を使ったこともなければ、魔力を補給する必要に遭遇したこともない。


「いっ一度もありません。」


嘘ではない正直な答えを述べたのに、牢内は水を打ったように静まり返った。


「またまたぁ。キミほど可愛い子なら引く手あまたっしょ。」


茶化したように笑う美青年に、麻祐は少しふてくされたようににらむ。
冗談を受け流せるほどには大人になったはずだが、赤の他人から、それも超絶美形ぞろいの中でバカにされる覚えはない。


「こんなときに冗談なんかやめてください。」


麻祐は顔を赤くしながらふんっと鼻を鳴らした。
また静まり返る牢内。ふぅとどこか呆れたようなため息が聞こえてくる。


「ティオ。今のはあなたが悪いですよ。」

「えー。俺だけ悪者とかなしっすよ。ラルド隊長もドミニク局長も内心俺と一緒のこと思ってるくせに。」

「まあ、ドミニク。ティオの言うことももっともだ。魔力を補給したことがないかどうかは、確かめればいい。」

「そうですね。それが一番手っ取り早いですかね。」

「は?」


思わず間抜けな声が出たのは仕方がない。美形三人に覗き込まれたと思った瞬間、麻祐は上から抑えられるようにして簡素なベッドに寝かせられていた。真上にアーチ状の天井が見えるが、三人の顔も三方向に広がっている。


「ち、ちょっ何するんですか?」


ここにきて乙女の貞操が危険にさらされるのかと麻祐は焦る。


「なに、確かめるだけで痛いことはしない。」


そういう問題じゃないと、麻祐は頭上で手を押さえてくるラルドをにらんだ。
暴れると言葉で表現するのは簡単だが、普段から鍛え上げている軍人相手に力勝負で勝てるわけがない。大きな手のひらにつかまれた手首は、痛くもないのに微動だにもしない。男と女の力さに恐怖を覚えるには十分だった。


「ちょ、なんで暴れるかなぁ。」


ティオと呼ばれた男に足をつかまれる。別にそれ自体は大したことがないのに、M字開脚にされるのはまっぴらごめんだと麻祐は全体力をかけて抵抗していた。


「いやっ、何するの、放してよ!」


どうしてもっとこう的確な単語がないのかと思う。
抵抗の言葉は引きだせても、抵抗できる力もそれを阻止できる言葉も見つからない。
麻祐はにこりとドミニクの笑う顔を最後に、下半身に埋まっていく彼の指に全神経が集中していくのがわかっていた。


「ヤダっ、ちょ、待ってそっ、アッ?!」


何も知らない子供ではない。
二人の男たちに抑えられた上に、美形の優男の指がゆっくりと侵入してくるせいで麻祐の体がびくりとこわ張る。


「魔力をもらったことがないのは嘘ですね。」

「ッヤっ、あ、ちょ…はぁ…はぁ。」


内部を確認するかのようなドミニクの指の動きに麻祐の腰はうねる。こんな状況で感じたくもないのに、感じていると思われたくもないのに、優しく抜き差しされる凌辱な行為にだんだんと潤みを帯びた音が麻祐の下半身から響き始めていた。


「ですが、調教を受けているような形跡もありません。」

「ひっ…ぁ…あ…ヤメッ」

「こらこら、そんなに抵抗しては苦しくなるのは貴女のほうですよ。」


くすくすと笑っている顔を思い切り蹴飛ばしてやりたいのに、麻祐の体は与えられる愛撫を受け入れて震えている。
気持ちがいい。彼氏でも思ったことがないのに、初めて会った異国の男に感じる体が恨めしい。
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