★八香姫は夜伽に問う

□第一夜:密約の指導
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幼いころより、立場や役目を教え込まれてきた。
八香(ヤカ)一族の頭首である野菊の元に生まれたからには、未来は決まっているも同然。雪乃は自分の意志が芽生える前から、当然のことように将来は野菊の後を継ぎ、八香一族を率いる者としての覚悟が求められてきた。
八香一族は、床術を自在に操ることで、本来なら弱者として操られるだけのただの女でありながら、権力を操れるほどの力を身につけた一族の総称。
古くは戦神の血をひき、交わりにおいて、勝利を約束してきたと言われている。


「ッ…ぁ…〜〜っぁ」


開いた股の間に埋まる後頭部を押しのけようと、かれこれ数刻。


「ヤッ…ぁ…そこっ…待ッてあぁ」


一向にどけてもらえないどころか、時間を増すごとに埋められた箇所でうごめく何かは雪乃の弱い部分を攻め立ててくる。歴史の重厚感漂う和室の一角。物心ついた時から、八香に生まれたものは皆、代々伝わる技術と技巧をその体で学ぶように訓練を行うことが義務付けられている。
それは、八香当主の娘として生まれた姫君であったとしても例外ではない。雪乃の母、野菊は十五歳にして立派に務めを果たしたと言われている。ところが雪乃は十八歳にして、まだ初陣もしていなかった。


「相変わらず、やらしい味してやがる。ほら、みろ。鍛錬を怠ってる証拠じゃねぇか。」


ペロリと舐めあげる舌の仕草に、ゾクゾクとした快楽が芯を駆け抜ける。
乙女の花芯を覗き込んでいた顔は、雪乃が荒い呼吸を繰り返すのに気付いて満足そうな笑いをその声に含ませていた。雪乃の高揚した胸元は上下に揺れ、赤く色づいた体は男を誘うように揺れている。


「何回気をやってんだよ」


雪乃の足の間から顔を上げた男は、端整な顔立ちを崩しもせずに、雪乃の内部にその長い指を押し込んだ。


「ったく、だらしねぇ顔しやがって。」

「ッぁあ…っ…ぁああ」

「八香の姫君なら、これくらい耐えて当然だ。」

「〜〜〜っく…ヤッ…ぁ…ひぁっ」


肺腑の奥まで息を吸い込んでも、熱に侵された体は微弱に震える声しか吐き出さない。面白いように内部をもてあそぶ男の指技に、雪乃の体はメスの匂いと愛蜜を部屋中にまき散らせていた。


「そう、いい子だ。もっと耐えられるだろ?」

「ぁ…ぁ無…理…〜〜ッヤ…なお…ぇ」


ふるふると雪乃は降参を示すように、指導を仰ぐ男に懇願の瞳を向ける。


「そういう顔は母親以上だな。」

「ッいやぁァアアアっァぁあああ」


両手で必死に乙女に暴虐を働く男の手を止めようとしたところで、所詮無理なこと。雪乃の腕はいとも簡単につかまり、頭上へ束ねられたのをいいことに、足の間を支配する指南に虐げられる。彼の腕は自由自在にその場所を堪能していた。


「イッ…ぁ…もうイッちゃったの…イッちゃったからぁ」


許してほしいと甘い鳴き声を枯らしながら、雪乃は弓なりに暴れる体で自分を支配する男に嘆願する。


「だから?」

「ッぁあ?!」

「感じてばかりで、ちゃんとやる気あんのか?」

「〜〜〜〜ッひぁ」


ずるりと解放された体。引き抜かれた指先がいやらしく光るのを横目に、雪乃は解放されたばかりの体を震えるように抱きしめた。はぁはぁと呼吸はまだ落ち着かない。
この部屋に招かれてから一体どれほどの時間が過ぎたのだろう。考える思考回路までグダグダに蕩けてしまいそうだと、雪乃は自分の蜜で濡れた指先を舐める男をへと恨みがましい視線を向けた。


「自分の力の無さを俺のせいにすんじゃねぇよ。」

「なっ!?」


技だけでなく口でも勝てないことはわかっている。けれど、修行の場から離れて一年あまり。久しぶりに顔を合わせた教師は、どうやらしばらく顔を見ない間に読心術まで会得してしまったらしい。


「野菊様から再度、お前のお守りを仰せつかったときは何事かと思ったが」

「そっそれは」

「あれだけ仕込んでやったってのに、まさか、雪乃がここまで出来の悪い生徒だったとはな。」

「っぅ」

「悪いな。お前が調教しがいのある女だってこと、うっかり忘れちまってたわ」


チクチクと棘の刺さるような言い回しをしてくるのは相変わらずで、雪乃もまた、十三歳から十七歳までの四年間、男を懐柔するための知識や技術を学んだ相手に、もう一度教えを乞うことになるとは夢にも思っていなかった。
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