★Abuslave-性妖精たちの鎮魂歌-
□第T章 ミュゼルの血
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第T章 ミュゼルの血
《STORY-01 種付けの儀式》
四肢を鎖で拘束された男は、その口に布を噛まされ、目を布でおおわれ、まるで聖なるもののように磔(ハリツケ)にされていた。
その周囲には全身マントの異人たちが、生きているかもわからない彼の横に立ち控えている。
しかし天高くそびえたつ彼の象徴は、痛いほど腫れ上がり、異様なぬめりを帯びて光っていた。
「くッ……ッ!?」
男は、しきりに何か言いたそうだが、それを聞こうとする者も聞きたいと思う者もいない。
熱気にざわつく会場では、その声がカキ消されてしまうからかもしれないが、磔の男がもらすくぐもった吐息は、鼻から何度も荒い息となって吐き出されていた。
そんな自由を奪われた男の前には、無数の女たちが列をなしている。
ある者は目を失い、ある者は耳を無くし、ある者は四肢のすべてを切り取られていた。
が、それを気にする者も特にいない。
ここではそれが当たり前で、そうすることが重要とされている。
「グぁッ!?」
また男が何か言いたそうに声をくぐもらせた。
見ると、そのぬめりを帯びたイチモツに、やはり四肢を拘束された女が埋め込まれていく。
垂れて尖った耳と、色素の薄い髪や瞳。性を与えられて奏でる鳴き声の美しさに、ひとめでミュゼルの血を持つものだとわかる。
「イヤァッ!?」
「ッ……ぐっ…アッ」
強制的に抜き差しされる快楽の行為に泣き叫ぶ少女と苦しむ男。
先程から何度も少女を変えて繰り返される行為だが、男の異物は一向に萎えることを知らない。
「クラ〜ン。」
「クラ〜ン。」
妖精の血を持つものが強制的に交尾させられているのを眼下に、似たような2つの声がクランの名を呼んだ。
その呼び声に反応したわけではないが、一際上段にある一際豪華な椅子の上で足を組み、グラスを傾けていたクランがグラスを近くのテーブルへと置く。
「ムーアとムーイか。」
白い衣装を動かすどころか、紫の瞳を動かすこともなくクランは近寄ってきた3つの影を言い当てた。
「何飲んでるの?」
「血?ちょうだい?」
赤い瞳と青い瞳。
それ以外には区別がつかない濃紫髪の双子。
なつっこい声を交互にあげながら、二人はクランの前に現れる。
その三歩後ろを四つん這いでついてくる幼い少女に、クランは初めてその視線を動かした。
「前に見たミュゼルと違うな。」
別に興味はないが……と、雰囲気で付け加えながらクランは再び視線を例の男女に戻した。
無理矢理腰を前後させられている女と、動くことを許されない男。
やがて、男の全身が硬直を見せ始め、その白濁とした液体が名も知らぬ少女の中に注ぎ込まれていった。
それを見届けながら、双子の瞳が怪しく光る。
「「飽きたから殺しちゃった。」」
笑顔で声をそろえたムーアとムーイの後ろで、ピクリと幼女の肩が震えた。
「だからクランに紹介してあげようと思って〜。」
「僕らの新しい奴隷をね。」
ニコニコと話しかけてくるムーアとムーイにも、クランの表情は変わらない。
どこか苛立ちを含んだように、ジッと前を見据えていた。
「そんなにシュアくん見つめちゃって〜。」
「シエラ嬢の奴隷が欲しいの?」
無愛想なクランの対応を気にもせずに、ムーアとムーイは口を動かし続けている。
どうやら、この卑猥な儀式の台座にあげられている哀れな男の名前はシュアというらしい。
しかし、それはクランも知っていた。
「ミュゼルの王族で生かしてる男はシュアくんだけだもんね〜。」
「だから、こうして種付けの場があるんだよね。」
「ミュゼル同士で孕(ハラ)ませて〜。」
「純血を産ませよう〜。」
キャッキャと歌う双子を脇におきながら、それでもクランはジッとシュアを見つめていた。
繰り返される結合。
吐き出される精子。
種を植えられていく奴隷たち。
永遠と繰り返される人外の行為に、血筋が浮き上がっていたシュアの男根が疲れをあらわしはじめた。
「グァァッ!?」
周囲を取り囲んでいた異人たちによって、直接性器に突き刺された数本の針にシュアが声をあげたと思った瞬間、彼の男根は吸い上げた液体で象徴を取り戻した。
ドクドクと浮き上がる血筋と、膨張してひとりでに勃起するモノ……そして、また傷を与えられた女が突き刺さっていく。
「今年は何人でっきるかなぁ?」
「沢山作ってもらわないと困るもんね。」
「「死んじゃうから。」」
口数が減らないバカな双子の後ろでは、恐怖に固まる幼い娘がビクビクと震えていた。