★Abuslave-性妖精たちの鎮魂歌-

□処章 奴隷という身分
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生まれた時から、奴隷だったわけではない。


「アアッ…ひ…アッ!?」


けれど、3つの時に捉(トラ)えられてから20年。その間に受けた調教がナクルの全てになっていた。

調教と拷問。

紙一重に受けてきた虐待の歴史の数々が、ナクルの心を奴隷として定着させ、サディスティナ伯爵家の別宅にとどまらせている。
永遠に快楽にもだえ、その声を枯らしても、主人が飽くまで歌い続けなければならない。


「アッひ…ッ…く…はぁ…」


ナクルの腰は、いつしか自然に揺れ始めていた。


「本当にナクルは、この馬が好きですね。」

「あ…ァウッ…や…あぁ」

「この調子でいてくれれば、私も貴女を殺さずにすみます。」


笑顔で言う台詞とは到底思えない言葉も、ここではそれがすべて。

逆らうものには死あるのみ。


「そうそう、忘れるところでした。」


手足に傷がつくこともお構いなしに、快楽をむさぼり始めたナクルを残して、ニイフが傍を離れる。

そして、ものの数十秒後に戻ってきたその手には、真っ赤に焼けた刻印のついた棒が握りしめられていた。


「われわれ悪魔の魔力を込めた印も、あなたがたミュゼルの血はすぐに消し去ってしまいますから困ったものです。」

「い…ッ…アッ」


喘ぐナクルの背後に歩み寄ってきたニイフの顔がナクルの肩にのる。


「いい感じに鳴いてますが、その程度の歌声では遠くにおられるクラン様まで聞こえませんよ?」

「ヒッ…ん…」


甘くしびれるようなニイフの声が、ナクルの脳裏を掻き乱し、更に腰の動きを早めさせる。
グッチャグッチャと、聞くに耐えがたい淫質な音は、すでに部屋中に木霊していた。


「悪くありませんが…──」


スッと離れたニイフの口角がニヤリとあがる。


「───…この屋敷を越え、世界の果ての果てまで奇声をあげてもらいましょうか。」

「ッ!!?」


その瞬間に響き渡ったナクルの美声は、実に世界を魅了した。

焼け焦げていく肌の匂い。

真っ赤に焼けた鉄の刻印を背中の下辺りに押し付けられ、同時に天に登り詰めたナクルの身体が激しく揺れ動く。
が、それは許されない。


「綺麗につきましたよ。」


繋がれた鎖と、固定された身体を逃がすこともできず、グッタリと頭を垂らしたナクルの背後でニイフは笑う。


「この出来だと、クラン様も満足してくださるでしょう。」

「くっ…あ……ぁあ……」

「ん?」


苦しみと痛みに、ポロポロと涙をこぼすナクルに気づいたニイフが不思議そうに首をかしげる。


「ひッ!?」


またもや叩かれたほほに、ナクルの涙はピタリと止まった。


「われわれが奴隷に義務付けているのは、泣くことではない。」

「ヤッ…っ…やぁぁっ」

「奴隷の分際で涙を流すなど聞いて飽きれますよ。なんなら、このまま乳首を引きちぎってあげましょうか?」

「あ…ッ…申し訳ござ…ま…せ…ンァッ…許してくら…さ…」


乳首に取り付けられた輪を容赦なく引っ張るニイフに、ナクルの声が再び鳴く。


「クラン様の紋章をその身体に刻まれるということが、どれほど名誉なことかわかっていますね?」

「はっは…イッ…やアアアッ!?」


ブチッと聞こえた音の先に鮮血が飛ぶ。


「アァァァアアッ…っ…」


コロコロとナクルの前方に放り投げられたピアスが、床に落ちて独特の金属音を走らせた。


「奴隷たるものの宿命…──」


可愛い乳首からポタポタとしたたる血が、ナクルの肌に模様を描いていく。

痛いだとか

苦しいだとか

慣れてしまいたいほどの苦痛も、治癒能力の高い妖精の血を引く者にとっては、すべてが初めてに等しい体罰でしかない。


「──…その命、尽き果てるまで啼(ナ)いてもらいましょうか。」

「ッ!?」


肉厚なニイフの舌が、えぐれたばかりのナクルの乳首を舐めあげる。


「痛ッ…ァァァアッ!?」


あまりの激痛に、ナクルは涙を流して許しをこうた。

逃げられないことなどわかっているのに……血をすすり上げるニイフの頭上で首を振り、涙を撒き散らせながらナクルは愛蜜をしたたらせていく。


「あと、最後の確認ですが…──」

「ひアッ!?」

「──…貴女の血を飲んでいることは、くれぐれもクラン様には秘密になさい。」

「ッ!?」


何が起こったのか……理解するよりも早く、乳首の血を舐めあげるついでに、首筋まで這い上がってきたニイフの牙がナクルの肌に突き刺さっていた。

その、すすり上げられる血の音が聞こえたのを最後に、ナクルは意識を手放していく。

ゆっくりと

月と霧が隠す屋敷の奥で、ナクルは望んでも変わらない、悪夢のような夜を過ごしていた。


…────…end...
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