★愛欲の施設 - Love Shelter -

□第8話 長い夏休み
1ページ/7ページ


《長い夏休み》

セミの大合唱で始まる夏の朝はうだるように暑く、世間ではお盆の帰省ラッシュや夏祭りのイベントなどで忙しい時間を過ごす人が多い中、優羽は自室のベッドの中にいた。

年中快適な気温と湿度。
防音完備の建物には虫の音色ひとつ届かない。
ある意味、季節がもたらす自然の恩恵を無下にしている気もするが、この豪華な邸宅には想像以上の近代技術が取り入れられているのだから仕方がない。


「────っも…ヤ…〜ッ」


汗や日焼けとは無縁の上に、クーラーでほどよく冷やされた室内で優羽は贅沢にも"ここじゃないどこかに行きたい"と願う。

真夏の太陽が容赦なく地上を焦がそうとしているのか、窓から見える空は晴天にも関わらず、優羽は非健康的な朝を迎えていた。


「くっ…るしぃ……ッ」

「気のせいですよ。」


何故こんなに爽やかな笑顔をし続けられるのか、疑問で仕方ない。

こっちは部屋の温度設定がおかしくなったんじゃないかと勘違いするほど汗が出てくるのに、戒は寒そうに布団にもぐりこみながら優羽に笑顔をむけていた。

顔だけ出した布団の中の異変に気づいたのは、もう何時間も前のような気がする。


「優羽が風邪引くといけませんから。」


夏風邪はひくと後が大変ですよと、小さな子供を寝かしつけるように、戒は優羽が埋められた布団の上を軽くたたく。


「──あ…ヤッ…め!?」

「何もしてませんけど?」


たしかに戒は何もしてない。
優羽の隣で肩肘をつきながら寝転んでいるだけ。


「外は暑いですし、ここはとても快適です。」


ありがとうございますと、笑顔でお礼をいう戒の隣で優羽は大きく体を動かしていた。
モゾモゾと不自然に優羽の真上のシーツだけが波打っている。


「アッ!?〜〜っャだッ…ダメ…ぬ…ぃっ…抜いてぇッ!?」

「朝から優羽は元気ですね。こちらは明け方にようやく布団に潜り込めたというのに。」

「カィッ…寝ちゃダ…ぁぁぁっぁ───」


わざとらしい戒のあくびに焦った優羽は、体を動かして振動を強めたそれに更なる声をあげた。


「うるさいですよ。近所迷惑です。」


防音設備がばっちり行き届いた家でそんなことがないことなどわかっているのに、冷静な判断力を失った優羽は素直に唇をかんで大人しく声を飲み込む。
けれど逆に、クスクスと笑う戒の横で、押し殺した声のかわりに身体が跳び跳ねた。


「動いたら動くだけ気持ちよくなりますよ。」


よかったですねと、戒は枕の下から説明書のようなものを取り出し、これ見よがしに優羽とそれを交互に見つめる。
使い方など読まなくても知っているくせに、わざとらしく目を通す戒が憎らしかった。


「そんな目で見て誘ってるんですか?」

「ちガッ……ぁう……ん…ッあ」


涙目で首を横にふる優羽に、「そうですか。」と短く答えた後、戒はおもむろに手をのばす。
だけどすぐに、その手は行き場をなくして元の位置に戻っていった。


「結構強めにしてあげてるんですが、壊れてるんでしょうか?」

「ぁ!?今、ダ…メ…触らな…ぃでぇッ!!?」

「そうですか?せっかく抜いてあげようと思ったのに。」


優羽がいいならこのままにしておきますと、戒はまた説明書に顔を戻す。


「──ちがっ…ャ…ッ…またッ…戒っ…かぃッ!!」

「なんですか?」


戒の名前を何度も呼びながら、優羽の体はしっかりと絶頂を繰り返していく。
びくびくと、うねる真っ白なシーツが異様に湿度をあげていた。


「ああ。可愛い優羽のイクところなら、しっかり見ていますから安心して感じてください。」


笑顔で見当違いなことを口走る戒に、違うと首をふってもやまない振動に身体が痙攣をおこす。

息もまともに出来ない上に、自由に動かない体に取り付けられたもののせいで全身が熱くてしかたがなかった。


「っ…イクッ…も…ィヤァァァッァ──…あっ…戒…かい」

「どうしましょう?」

「イァ…ッ……なッ…ニ?」

「可愛すぎます。」


よしよしと頭を撫でながら、喘ぎ声をこぼす優羽の口に戒は舌をはわす。


「メスの顔してますよ?」

「ッ?!」


大きくひらいた瞳に戒の綺麗な笑顔をうつしながら、優羽は快感に声を震わせていく。


「優羽?」


名前を呼ばれて、優羽は苦しそうに歪めた顔を戒にむけた。


「本番は、これからですよ。」


大きな波が過ぎ去って、甘い吐息を激しく繰り返す優羽の上にかぶせられていた布団がのけられる。
するとそこには、卑猥な機械を埋め込まれた可憐な秘部があった。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ