★愛欲の施設 - Love Shelter -
□第2話 家族のルール
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《家族のルール》
カーテンの隙間から容赦なく差し込む朝の太陽に、顔をしかめながら優羽は寝返りをうった。
心地よい眠りをもたらす柔らかな布団の中で、肌に絡みつくシーツの気配が優羽の意識に何も身につけていないことを気づかせる。
「はっ!!?」
一瞬にして、昨夜の出来事を思い出した優羽は、思い出したように跳ね起きた。と同時に、ひどいダルさと腰の痛みが全身を追いかけてきた反動でお腹を抱えてうずくまる。
内側から込み上げるジンジンとした違和感と、まるでそこに体を支える芯があったのではないかと感じるほどポッカリと空いてしまった膣の入り口が、ヒリヒリと生々しい情事の感触を思い出させた。
「あっ。」
そのついでに、体中に赤い印がついていることに気付いた優羽は、恥ずかしさと戸惑いから、震えるように自分の体を抱き締めた。
どうしよう。
本当に父に抱かれたのか、嫌な夢を見ていたのではないかという儚い疑問が見事に砕けちるには十分な証拠だった。
何度も義父の腕の中であらがい、歓喜の声をあげた。
あれは本当に自分だったのだろうか?
嫌がる自分を簡単に犯す男から、女の悦びを教え込まれ、高く切なく甘い声をあげながら、男を求める術を叩き込まれる。
「───…っ〜〜。」
バサッと、頭まですっぽりと隠れるようにベッドにもぐりこんだ。
思い出さなくても覚えている。
それ以前に、身体が知らせてくれている。
もう処女ではない。
せっかく新しく迎え入れられたばかりの家で、これからどんな顔をして暮らしていけばいいかわからなくなってしまった。
義父の顔を見るのが怖い。
そう思えば思うほど、ベッドの中で強く自分を抱きしめる腕に力がこもった。
「ッ!?」
カサッと何かが落ちた音に布団から顔を覗かせると、目の前に一枚のメモがふってくる。
どうやら、幸彦がベッドサイドにもうけられたテーブルに置いていったようだが、書かれた内容にまた顔が熱くなる。
「ヤダ……っ…もぉ。」
昨夜は可愛かっただの、寝顔が愛しいだの、前半はラブレターのようだが、後半は熱烈な口説き文句だったのだからたまらない。
幸彦が怖かったはずなのに、何故か鼓動がドキドキと早くなるのは気のせいではないだろう。
「幸彦さ……ま?」
口にしてから、ふいにズキッと痛んだ頭に優羽の顔が疑問ににじむ。
「いった。なに?」
思わず顔をしかめるほどの頭痛だったが、それは一瞬にして止んだ。
ますます疑問に感じる。
昨夜飲まされた媚薬の後遺症なのだろうか?それなら、義父を朝から訴えないといけない。
「反対にヤられそう。」
勝てる気が全然しないことに気づいて愕然と肩がおちる。
ただ負かされるだけならまだしも、幸彦は確実に昨日と同様の行為で仕返しをしてくることだろう。
いや、昨日と同じならまだいい。
「やっぱりやめとこう。」
もっとひどいことになりそうな気がして、ブルッと身を震わせた優羽は、ベッドに寝転んだままそのメモにもう一度目を通した。
愛してる
丁寧な字で書かれた四文字になぜか胸が痛くなる。
「優羽〜。起きてる?」
「りっ陸くん!?」
「あっ、起きてる。入るよ?」
軽くノックする音とともにかけられた声から部屋の外にいる人物を言い当てた優羽は、扉へと顔をむけた瞬間、驚きの声をあげた。
いつからそこにいたのか、たしかに「入るよ」と聞こえたはずなのに陸はすでに部屋にいる。
「やっ…出ていって!!」
「どうして?」
「どっどうしても!!」
驚愕の眼差しを向けたあと、再び優羽はガバッと布団の中に逃げ込んだ。
頭から布団をかぶって身を丸める優羽を不思議そうに見下ろしながら陸は首をかしげる。
「別に、僕は寝起きだからとか気にしないよ?」
「わっ…わた…私が気にするのっ!」
「ふぅん。まぁ、いっか。
でも、朝食の時間だから早くおりてきてね〜。」
思いの外、あっさりと部屋を出ていってくれた陸に安堵の息をこぼしながら、優羽はベッドの隙間から顔を覗かせた。
「あ、焦ったぁ…。」
まだドキドキと心臓が脈打っている。
幸彦の手紙に気をとられていたとはいえ、確実に油断していた。
こんな体を見られなくてよかったと心から思う。そして同時に、彼ら兄弟に不審がられないようにしなきゃいけないと思った。
知られたくない。
幸彦への思いはどうであれ、父と関係を持ってしまったなんて、口が裂けても自分からは言えない。