★愛欲の施設 - Love Shelter -

□第9話 無駄に広い我が家
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「天才発明家の俺に作れねぇもんはねぇ!」

「自称じゃん。」


キラキラとした瞳を向ける優羽と鼻高々に笑う輝の間に、体を滑り込ませながらムスッとどこかいじけた顔の陸が割り込んでくる。


「優羽、あまり輝をのせないほうがいいよ。」

「えっ?」

「話しだけで日がくれちゃうから。」


そう言った陸は持ったままだった卑猥な玩具を輝の手に押し付けると、優羽に軽いキスをして部屋を出ていった。

パチパチと目を瞬かせてその姿を見送った優羽は、ハッと再び手を止めいたことに気づいて体を動かしはじめる。
ピカリンを設置すると独特な機械の音がして、汚れた窓をキレイにしていってくれた。

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「これで最後──だっ。」


ピッと軽い電子音をたててから、ピカリンが最後の窓の掃除を終えた。
廊下はゴーゴー君2号も先ほど役目を終えたのか静かになったし、広い玄関も納得がいく仕上がりになったはずだ。

誰が見てもピカピカだと言ってくれるだろう。


「もう七時半だけど陸、大丈夫かな?」


日が長くなった夏の空も、さすがに暗く熱が冷め始める。
汗ばむ肌にじっとりとした熱気は相変わらずだが、この屋敷内以上に暑いだろう庭で作業している姿を想像すると不安になった。


「輝も大丈夫かな?」


結局、家の中のほとんどを担ってくれた輝も心配だった。
半端じゃない数の部屋をひとりで掃除していることを思うと、断られたとはいえ手伝った方がよかったように思う。


「あっつーーーい!」

「あっ、陸。お疲れさま。」

「あれ、優羽。まだ終わってなかったの?」

「ううん。ちょうど終わったとこ。」


シャツの端で汗をぬぐいながら玄関を入ってきた陸に、優羽は笑顔を向ける。
けれど、めくりあげられた服の隙間から見えた陸の均整の取れた筋肉質な肌に、思わず優羽の視線が脇へとそれる。


「優羽もお疲れさま。」


のぞきこむように笑顔を向けてくる陸に、優羽は少し赤くなった顔を縦にふった。


「おっお疲れ様…です。」

「ノド乾いたぁ。輝はまだやってんのかな?」

「さぁ、たぶんもう終わってると思うんだけど。」

「今日の晩ごはん何かなぁ?」

「何にしよっか?」


綺麗になった廊下を陸と並んで歩きながら、優羽は輝を探す。
まだクーラーが効いていないのか、少し動くだけで伝う汗に思わずふらついた。


「何か冷たいのがいいね。」


ふらついた身体を咄嗟に支えてくれた陸にお礼を言いながら、優羽は夕食の提案をする。


「ッ?!」


支えてくれたいた陸がグイッと手を引いたせいで、優羽はぐらっとバランスを崩して壁に背中を打ち付けた。
どうしてこうなっているのかわからない。


「熱、あるんじゃない?」

「えっ───ッンッ?!」


情熱に揺らめく瞳に見つめられながら、陸の甘い口づけが降ってくる。
熱を測るのであれば、おでこを重ね合わせるだけでいいはずなのに、絡まる舌に別の熱が混み上がる。
逃げ場のない背後の壁に縫い付けられるように、優羽の身体は陸に押さえつけられて食べられていた。


「ッあ……〜っり…くッ」


クチュクチュと脳に響く生暖かい舌の音が妙に背筋を泡立たせる。
わずかにもれる吐息が、二人の欲情の高さを物語っていた。


「ダメッ…あッ…〜…りクッ!」

「あっつー。これ絶対熱あるよね?」


廊下でこれ以上の進行は認めないと、抵抗を見せた甲斐はむなしく、優羽は壁に押さえつけられたまま陸の指に検温される。
グチッと指の根本までゆっくり差し込んでくる陸に思わず優羽の腰は浮くが、立ったままではつま先立ちが限界。


「アッ…ひっあ…〜っメッ」


小刻みに震えながら受け入れていく優羽の唇に触れるか触れないかの距離で陸が微笑んでいるのがわかる。
その熱に支配された瞳に覗きこまれると抗えなくなる。
受け入れてしまう。


「あッ…り……陸ッ……」

「優羽、ほら力抜いて。」

「ンッ…あッ!?」


陸の服をつかむ手に力がこもっていく。
重なり合う唇からもれる声も、不規則に動きはじめた陸の指も、徐々に卑猥な音を響かせ始めていく。


「ねぇ。優羽の熱、僕に全部ちょーだい?」


クスクスと笑う陸の瞳が近すぎて、知らずに顔が熱を増す。
その瞬間に激しさを増した指の動きに、優羽は完全に身体を陸にゆだねた。


「やァっ…り…くッぅ…アァッァァ──」

「いいからイキなよ。汚したって僕が代わりに怒られてあげるから。」

「───ッ?!」


どうしてそんなに気持ちよくなるツボを知っているのか、押さえつけられた陸の指に優羽の体はビクンッと大きく弾む。


「ヤッ?!」


目を開いて大きく顔を歪ませた優羽の反応に、陸は肩に食い込んでいく女の爪痕を堪能する。
深く差し込んだ指の抜き差しだけで絶頂を迎えた優羽の声が、広い廊下を走り抜けていった。
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