★愛欲の施設 - Love Shelter -
□第8話 長い夏休み
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息をするのがやっとだった。
朦朧(モウロウ)とする頭が快楽に震える体に勝てずに、強制的に身体を暴れさせる。
「ぉねが…っ…戒っ…アァッぬぃて…ン…くら…さっ…ッ…ぅアァッ───」
「仕方ないですね。」
涙ながらに訴える優羽の頭をよしよしと撫でながら戒は腕の縄をほどくと、カチリと音をたてて卑猥な下着を解放した。
「──っアァッ…ァッ!?」
部屋に淫湿な音を響かせながら引き抜かれたそれに優羽は、大きく身体をのけぞらせる。
ズルズルと抜けていく感触に、身体が快感に震えていた。
「すごく濡れてますよ。」
「アァッ…っ…みな…で……」
「優羽は、本当に誘うのが上手ですね。」
うつろに首をかしげた優羽の腰を押さえつけながら、戒はクスっと笑みをこぼす。
「泣かれると、もっと鳴かしたくなります。」
「あっ…らメぇっ!?」
グチュッと溶けた音を響かせながら、ソレはゆっくりと埋め込まれてきた。
玩具とは違う。
血の通った男の異物。
「優羽は、中も温かいですね。」
「ぁアっ…かい…〜ヤッめ…テ──」
もう無理だと首をふる優羽に、嘘はいけないと戒は同じように首をふってみせた。
「こんなに締め付けてくるのに?」
「〜っまた……イ…ッちゃ」
確認するように打ち付けられた腰の律動を、優羽は顔をゆがませながら受け入れる。
それを余裕の表情で見つめていた戒の舌は、優羽の涙をすくいとった。
「ッ!?」
こんなときだと言うのに、ペロリと美味しそうに唇を舐める戒に胸が高鳴る。
だけどもう、思考も身体も何もかもが限界だった。
「いいですよ。」
ニコリと笑った戒の言葉とは裏腹に、ピタリと止まった律動。
「ひッぁ……?」
優羽は恨めしそうに戒を見上げて、また首を横にふった。
どこまで意地悪なのだろうかと思う。
欲しくない時はこれでもかと与えられる快楽は、欲しいときほど与えられない。
「か…い……意地悪しな…ッ…で」
その見下ろしてくる瞳には抗えない。
「ほら、ちゃんと言ってください。」
「戒っ…ッ!?」
「でないとこのまま終わりますよ?」
卑怯だと思う。
ヤめてほしいと懇願したことはひとつも叶えてくれないのに、シテほしいことは懇願するまで叶えてもらえない。
いくら彼らの思惑に屈しないと決めたとしても、所詮それは儚い夢。
「戒ッ…くださ…っ…ィ」
「今度は一緒にいきましょうね。」
「ッ!?……っ…ふぁ…」
夢のような甘い世界で、口の中まで戒に支配される。
止まらない激動と込み上げてくる快感に、体が強くもっていかれた。
「────っ…アアッァッァァ」
頭の中が真っ白に染まり、戒に抱き締められた全身が強くはりつめる。
腰が逃げようとするのを許されずに悶える優羽を捕まえた戒は、楽しそうに笑っていた。
──────
「すみません。」
愛おしそうに謝られれば、優羽は何も言い返せない。
結局、繋がったまま何度もキスをしてくる戒に、しょうがないなと深い息を吐いて許すことになった。
「朝御飯は食べ損ねましたね。」
「……?」
半分以上、意識を眠らせていた優羽はわずかに残った意識をふりしぼって時計をとらえる。
「十時?」
いつのまにそんな時間になったのだろうとトロンとした顔をする優羽に、戒はもう一度口づけを落としてから自身を引き抜いた。
「優羽、大丈夫ですか?」
「……あッ…」
「お昼ご飯を食べたら、きちんと寝て下さい。」
どこか計画的に見えなくもない戒のいたずらな視線が気になる。
今すぐにでも眠ってしまいたかったが、家族のルールを守らなかった代償はあとが怖い。
「これ、あとで輝に返しといてくださいね。」
「──…えっ!?」
さきほどの異物がついた下着のようなものを、別の人間に渡してくれと頼む戒の依頼に耳をうたがった。
「そんなっ!? むっ無理だよ!!」
「新作の試作品らしいので、感想をのべる相手がいかなければ意味がないでしょう?」
「か…感想って……。」
正直、覚えていない。
そもそも、感想なんてあってないようなもの。
快楽にはまった体の感想なんて、大抵いつも一緒なのに一体何を伝えればいいのだろう。
「ああ、優羽は朝御飯には参加できないって先に伝えてあるので、そこは心配しなくても大丈夫です。」
早く着替えて行きましょうと戒は笑顔で手を引くが、眠気が吹き飛ぶほどの宣告をうけた優羽は自分のベッドの上に置き去りにされる玩具から意識が手放せないでいた。