◆心のひだまり◆
□雨の日。
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「キミは何を頼む?僕はいつもアップルティーを頼むんだけど。」
『私もそれで良い。』
――ザザ…
さっきよりも更に分厚くなった雨雲から、二人の沈黙を破ることを促すようにさめざめとした雨音が耳に響き渡る。
『不二君。』
沈黙を破ったのは彼女だった。
ゆっくりと、まるで相手の出方を伺っているような様子で。
「うん。」
とりあえず相槌を打つ。つい、意地を張って素
っ気無い返事をしてしまう自分が嫌だった。
「アップルティー、お持ちいたしました。」
店員さんの声がいつもより遠く聞こえる。自分の関心はもっぱら、彼女の次の言葉へ向けられれていた。
『…私、転校することになったの。』
「…へぇ。」
内心驚いた。彼女が何故自分にそれを打ち明け
たのかわからない。彼女はいつも、秘密主義だったから。
『…冷たいな』
「そう?」
彼女の本心が見えない。
ボクの心を揺さぶっているんだろうか。
『でも、いいの。ただ、青春学園で過ごした日々がとても楽しかったのは、貴方のお陰。』
――ありがとう。
そう言って、彼女は席を立とうとした。ボクは慌てて、
「ボクはッ!」
――――――彼女は振り向かない。
カラン…
「まだ君を愛しているんだ…」