長い夢
□神と人
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ぜぃぜぃと息を荒げるスーツの男を待ちながらゆっくり上がる。じっちゃとばっちゃの客というが本当だろうか
「あと、もう少しだからがんばれよー」
「はぁ、あとっ……なんだん…ですっか」
「あとなぁ、50くらいか?まぁ残り四分の一くらいだよかったな」
山に張り付くようにずらりと並んだ階段はなんども折り返して長く続く
毎日ここを通っていればそう辛くはないが、新参者にはきついか
「はぁ、うぅっ足がっ」
仕方ねぇな、男のところまで降りて背中を向ける
「おぶされ、ほら」
「えっ、いや」
「日が暮れるからな、日が暮れると俺の都合が悪い」
さっさとおんぶしてそのまま上がる、男が太ってなくてよかった
さっさと上がって鳥居の前で下ろす。そして一礼をしてから端を通って境内に入る、手を洗い参拝してから、そばにある家に入る
「おい、お茶は麦茶でいいか?あとばっちゃとじっちゃの仏壇は廊下の突き当たりだ、その左の部屋が居間になってるからそこで待っててくれ」
「あ、あぁ、ありがとうございます」
さっさと準備をしてから、居間に向かうと男が正座して待っていた
「正座じゃなくてもいいんだぜ?足がいたいだろ」
「うっ、失礼します」
素直に足を崩した男の前にお茶をおいて机を挟んで向かいに座る
「で、なんのようだ?」
「申し遅れました、政府の役員で歴史修正主義者討伐の任を仰せつかりました紺野と申します
この度は、苗字 名前さんに審神者になっていただきたく思いここに参りました」
「それで、詳しく説明してくれるんだろ?」
***
「なるほどな……にわかに信じられないんだが、手の込んだドッキリとも考えられないしな。それにそういった者がいても不思議じゃないし」
「神隠しですか?」
「まぁな……なぁ学校はどうするんだ?」
「辞めることになります
政府からの任ですからほぼ強制的になってしまい申し訳ありません。しかし、霊力が強くなければ勤まらぬ務め。お願い申し上げます」
「……わかった、俺がどうこう言っても無駄な話だ。でも、この神社の面倒は見てくれよ」
「わかりました。
あと、審神者は神に真名を知られてはなりません、偽名を使うことになりますが……」
「それなら問題ない、今のがもうすでに偽名だ。真名はばっちゃとじっちゃが戸籍登録するとき嫌がったからな今の名を登録したってわけだ」
「は、はぁ……では明日また、迎えに来ますね」
「泊まっていくか?明日また上がるの無理だろ?」
男はハッとして深く頷いた