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□くじけそうな、崩れそうな
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時刻はとうに日付を跨いでいる。
しかし、そんな人気のない教会の廊下には、小さな人影があった。

明日も早いと言うのに、テイトは教会内をあても無く歩いていた。こぼれる吐息は白く浮かび、すぐに消える。それは、まるでため息のように見えた。



―――眠れない。

ここに来てもう何度目かわからないくらいだが、テイトは不眠に陥る。原因は様々だが、すべて同じ出来事に関係することを、テイトは嫌になるくらいよく分かっている。


――逝ってしまった、大切な大切な親友。


彼のことを思うと、眠れないほうが当然だ。むしろ静かに眠ることができる夜のほうが、テイトには忌まわしい。


そうだと言うのに、この教会での日々はあまりにも穏やかで、幸せで。
もう死ぬことなど怖くないと覚悟した身でも、また怖くなった。


だからこうして寒いなか、ふらふらと歩いている。生まれた迷いを凍てつかせるために。
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