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□この空が、泣き止んだら
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――雨が降っている。
土砂降りのように激しくはないが、しとしとと優しく降り続く雨に、教会の窓から黒い服を纏う小さな子供が美惚れていた。
けれどその子供…テイトの表情は、とても喜嬉としたものではなくて。
むしろ少しだけ苦しげに、眉根が寄せられていた。
――雨は好きだ。
嫌いだと言う人が多いけど、本当は、色々なモノに好かれている。…必要とされている。
まるで、アイツのようだと思う。
クス、と少しだけ笑ったテイトは、次の瞬間その年齢の子供がするのには不似合いな、大人びた表情をして立っていた。
……アイツは、泣かない。
それがテイトには苛立たしい。違う、痛々しくて、切ない。
本当は誰よりも悲しくて、誰よりも自分を責めているはずだ。
なのに、泣かない。
…だから、雨が降っていると少しだけ安心する。
まるで、アイツが泣いているようだ。ずっと、この雨を傍で見ていたいと思ってしまう。
しばらくして、雨が小降りになってきた。雲が流れ、少しずつ明るくなっていく空を見つめながら、テイトは思う。
――大切にしたい。
よくわからないけど、自分はアイツがとても大切らしい。
アイツにとっての自分が、この雨のような優しい存在であれたら、と思う。だから。
この空が泣き止んだら、フラウに会いに行こう。
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