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□好き、なのに、泣いたのは誰…?
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いつもと変わらないうららかな教会の昼下がり、傍らには洗濯物がはためき、空の青と白のコントラストが綺麗で。

不良司教と呼ばれるフラウは、そんないつも通りの光景を眺めつつ、紫煙を吐き出していた。

しばらくもしないうちに、遠くから誰かが自分を呼んでいる声が聞こえてきた。


「フラウーー!どこにいるんだー!?」

まだ声変わりが終わっていない、アルトの声を聞けば、それは誰のものか瞬時にわかる。
この教会のアイドル的存在、だけどいつも少しだけ寂しそうな顔をする少年……テイトのものだ。

テイトが自分を探しているという歓喜と、そういえば掃除をサボったままだった後ろめたさから、あたふたしているといつの間にか、すぐ後ろにテイトが立っていた。

「よぉクソガキ、俺様を探してたのか?」

なんとかそれだけ言うと、目の前の少年…テイトは、翡翠色の瞳を大きくさせて、真っ赤になって怒鳴った。

「何こんなとこでサボってるんだよ!!このエロ司教///!」
「サボるのとエロ司教は関係ねぇだろう?」
「あるに決まってんだろう!!なんだよその本は!?」
「あーー?」

確かに足元には、フラウのバイブルとも言えるエロ本が開いてある。

「あぁこれはな?大人のバイブルってやつだ。けど堂々と読めねぇだろ?司教って大変☆」
「ふざけんなっ!!何がバイブルだ!」

どうやらテイトは、自分がエロ本を開いていた事がそうとう気に入らないらしい。だがフラウにしてみれば不本意だったりする。

「別に煙草吸ってただけで読んじゃいねぇよ、ただなんとなく開いてただけだ。」

だからそんなに怒るなよ、と言ってやれば、なんだよなんとなくって…とひどく覇気のない声が返ってくる。

それに苦笑しながら、自分よりふたまわりも小さいテイトの頭を撫でてやれば、くすぐったそうに笑っている。

それに安堵しつつ空を見上げると、先ほどの青空は何処へやら、いつの間にか曇天となっていた。

舌打ちしながら振り返り、「おいクソガキ、行くぞ。」と告げて洗濯物を片付けようと奮闘しているシスター達のところへ駆け出した。
しかしいつまでたっても後から続く足音は無い。不審に思ったフラウが振り返ると、テイトはさっきの位置に立ったままだった。いつもなら真っ先に駆け出しそうなテイトの性格を考えると明らかにおかしい。そう言えばテイトは自分に何の用だったのだろうか?

「おいクソガキ……」
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