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□別レ ト 再会
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 大好きだった。

 だから、誰よりも幸せになってほしい。

 そう、例え、自分が傍からいなくなったとしても――――…




「ユーリッ!!」

 紅い。
 視界が紅く染まって、全てが色を一つにしている。
 どこを見ても、紅。

「あ…っ」

 いくら手を伸ばしても届かない。
 大切な人が、どんどん遠くなっていく。
 声がもう、届かない。

「―――ッ!!」

 まるで時が止まったかのように、全てがスローモーション。
 頭の中に、様々な思いが廻る。
 国の事、仲間の事、地球の事、家族の事。
 そして―――…

「…あ…」

 嫌、だ。
 今、ここで思い出してしまったら、忘れてしまう。
 おれの中にある、全ての記憶が、全て、消えてしまう。
 嫌だ、嫌だ、嫌だ。
 忘れたくない。
 大切な気持ち、心、思い出、全部。
 遠くなっていって、戻らない。
 これが最後なんだ、とわかる。
 もう二度と、戻らないんだ、と。
 なら、伝えなくちゃ。
 おれの中から、大切なものが永遠に消えてしまう、その前に。

「…ン、ラ…ド…」

「――――!!」

 声が、聞こえない。
 聞きたいけれど、時間がもう無い。




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