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□呼び名
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今日も、外では雨が穏やかに、けれど、もう長い時間降り続いている。
梅雨時期に入った眞魔国は、毎日毎日、飽きる事を知らぬ様に雨が降り続いていた。
最初の内は「雨なんて嫌だ」だの「早く外で運動したい」だの言っていたユーリも流石に慣れて来たらしく、今日は俺の部屋で読書をしていた。
ベッドの上で真剣に本を読んでいたユーリが、不意に顔を上げて俺を呼んだ。
「…なぁ、コンラッド」
「何ですか、ユーリ」
「………」
俺の事を呼んだのは彼の方なのに、なぜか目を見開いて黙ったままこちらを見つめている。
「ユーリ?」
「…めずらしい…」
「何がです?」
呆気にとられた表情のまま呟かれた言葉を聞き返すと、またぼそりと呟く様に言った。
「おれの事、陛下、って呼ばないで、ユーリ、って、最初から…」
「え?あ…すみません。誰もいなかったから、つい…」
自覚してなかった。
確かに、いつもなら「陛下」と呼んでいるのに。
何て言うか…すんなりと「ユーリ」って言ってしまった。
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