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□もう届かないと知っていても、僕は。
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無邪気に笑うその表情も、平和を望み努力するその姿も、何もかもが愛おしくて、でも伝えられなくて。
貴方の存在があって、ようやく態度が軟化した弟を裏切るなんて、と言うのも、全ては苦しくなった言い訳でしかなく。
ただ見守るだけで良いなんて言葉は、単なる"綺麗事"になっていた。
苦しい、苦しい―――
まるで、出口の無い闇に突き落とされ、囚われたかのような感覚だった。
アナタヲミテイルノガ、ツラインダ
全てを、貴方のせいにして。
モウ、ニゲテシマイタイ―――!!
だから、俺は、逃げた。
もう何を言っても、全てが飾られた"嘘"の様にしか思えなくなっていたから。
「次に会う時は、貴方の敵です」
精一杯平静を装って、内心はとても苦しくて、悲しかった。
愕然とした泣きそうな色の隠された瞳が、胸を締め付ける。
ほんの一瞬見えただけだったのに、その一瞬の表情ですら、貴方を忘れられない。
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