何でもない日

□第8話
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文志の事で話し合いをして
みんなが帰った頃には夕方を迎えていた

「……」

唯葉は、少し疲れたようにイスに座っていた

(苦しいわよね…文志。真面目すぎるのよ)
「はぁ…」
(さすがに疲れたわ、私らしくもない。
声を荒らげるなんて…)

彼女は、文志にもらった小説をペラペラとめくる
もらった日の事を思い出す
本をめくるだけで、涙が溢れそうになる

もらったあと、彼女はそれをすぐに読んだ
見慣れた優しい文章、いつもと変わらず面白い
けれど…何故か悲しくなり、嫌な予感がして
無我夢中で駆け出していた

進路指導室の前で、会話を聞いた
彼女は、この時、怒りを感じていた
(経済学を…よりやりたいなんて嘘ばかり
あなたが真にやりたい事は…!)

(一対一で、文志と話した時は言いたい事を言えた
全員で話した時は、言葉が出なかった)

けんそんにも程がある。
彼には、素直な気持ちで純粋に…物を書き続けて欲しかった。
彼の文学へ対する思い以上に、これ以上
何が必要だと言うのか。
幼い頃は、あんなに無邪気に書き綴っていたのに…。

唯葉の中で、色々な思いが巡った
自分の事のように、悔しくて仕方なかった
涙が、ついに落ちた

「時が…そうさせたのね…」
彼女は、涙を流しながら、静かに呟いた

唯葉は
文志の将来が明るいものとなる事を、心から願った

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