何でもない日

□第1話
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僕は、物心ついた時から
文字が好きだった、本を読むのが好きだ
いつからか…自分で物語を書くようにもなった
何故かは分からない

父さんは普通の会社員だし
母さんも、パートに出ている主婦だ
誰かに教えられたわけじゃない
気がつくと、僕の部屋は、文房具や本で
埋め尽くされていた

小中学生の時に、暇さえあれば
書いたり読んだりしていたから、クラスで
「暗いやつ」と、からかわれたりもしたが
気にしなかった

書物に触れていると落ち着く

(今日は、何を書こうかな?挿し絵が欲しいな)

そんな事を考えていると、少年の部屋の扉が
ノックされた

コンコン

「はいよ」

入ってきたのは
少年と雰囲気のよく似た少女だった

「兄さん、ノートちょうだい」
「自分で買っとけよな…はいよ」
「忘れたの!気を付けるよ…」

少女は少年から、ノートを受け取っても
部屋から出ようとせずに、机に置かれていた
ノートに目をやった

「今日は、どんな物を書いてるの?」
「良いだろう…別に…」
「兄さん、最近、恥ずかしがるよね?
行き詰まった?」
「まぁな…毎日書いてると、こうなる」
「だったら休めば良いのに」
「落ち着かないの!」

少年は恥ずかしそうに、顔を赤らめて言った

「フフ…、兄さんらしいね」
「その…、この…、文音なら、この人物…
どう描く?」
「へ?…ああ、待ってね」

少女は
いつもの事。というように、すらすらと
絵を描いた

「はい」
「ありがとう」
「兄さん、自信もちなよ。じゃあね」

少女はそう言うと、部屋を出て行った

一人残された少年は
描き残された絵を見ながら、ぽつりと言った

「やっぱり、文音は凄い
文音には迷いがないんだ。羨ましいな」

少し笑ったあと
「なのに、僕は…」と、悲しく言った

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