キヒヒ!!!!

□66
4ページ/5ページ


なんかお腹痛ぇな。


まあいいや。
血を隠すためのコートを脱いで、立ち上がる。

ロッジからその人物が出たのを見計らって、揚々と近付いた。
彼の護衛は、身構えるなり真っ赤な私に驚くなり銃を向けてくるなりしているが、全く無視してやろう。

「こんにちは」

「なっ…ゲゲェッ!?利益の回収に来ただけなのに!どうしてお前がココに!」

「そういうスカル様こそ」

ここってカルカッサ傘下でしたか…これは申し訳ない。
なんて思っている間にスカルは踵を返して走り出した。

「えっ」

「ひいいい!!お前等あいつと関わるな!撤退!撤退ー!!あの女は化け物だ!」

「ちょっ」

護衛達もそれに従って車に乗り込んで、あっという間に車が発進してしまった。



そして私は、助けを求めることもできず、
崩れ落ちた。

「いっ…」

痛い。
猛烈に痛みを増してきた部位。

何故、痛覚麻痺が利かない。


「…ぎっ」

お腹が痛い。
どんどん痛む。
マジ痛い。

生命の危機を察知したのかは知らんが、思考だけが加速する。
冷や汗が噴き出し、呼吸が乱れる。


思わずそこを掴んだ。
下腹部を。


そう、下腹部が痛むのだ。

子宮の無いこの私はついぞ体験することのなかったはじめての痛みだ。
だが私は、この痛みを知っている。
知っているからこそ、耐えてしまえる悲しみ。

しかし、しかしだ、考えてみればこの痛みはやっぱ別物だ。
とても痛いしまずこの体には、そこにあるのは子宮ではない。
細胞の一つ一つが興味を持ち、引き付けられるようにざわついている。


それを認識した瞬間、背に甘い鳥肌がたった。
喉元はカラつくのに体は熱く潤うのを感じる。

子が欲しい。

溜め息をはいたつもりが、出たのは震えるほどに甘い吐息。あーーあもうこれどうしたもんか。

この弄られすぎた頭にもまだ本能が息づいていたとは。否、弄られた故の産物か。知らないが、とにかく遺伝子が欲しくてたまらない。
ああ、思考と身体が全くかみあってないではないか。
私の頭は本当に冷静極まりないのに、なにか違う声がする。考えばかりが巡る、情景が、劣情が、熱さが。

頭に火花が散る。

思考が。


かすむ視界に、黒が映る。


「驚いたな。僕の花嫁はいったい、どうしてしまったんだろう?」

何かが頬に触れる。


しかし、反応することはついぞできなかった。
私はそこで、意識を手放してしまったのだから。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ