キヒヒ!!!!

□66
2ページ/5ページ

「無理だな」

「無理っすか」

雲雀さん無理みたいです。

「その人物を連れて研究することは出来ないのだろう?」

「無理っす」

「そういうことだ。
 何より、その好意が刷り込みであると君は疑っているが、何か不都合でもあるのか?」

「その人の尊厳がヤバイんす」

「それこそ私には何の関係もない事だ。
 どちらにせよ、私の被検体と出来ないのなら、どうしようもないな」

「そですか」

どうしたもんか…。

「私に知識書き込んだりするから脳の操作なんて朝飯前かと思ってました」
「それは君が私の被検体だからだよ」
「なるほど」

切りまくって中身も知りつくして弄りまくってるからって奴ですね。
うん。雲雀さんをそうさせるわけにはいかんなこれ。

「それで、他には?」

「あっ、えっとー…
 未来でも聞きましたけど、私、なんか不死身の人見たら死ぬほど食いたくなって、でも欠片食ったら収まったんですよ。
 ミルフィオーレのデイジーとか、結局スカル様にだって発症しましたし…なんなんでしょう?」

「私のプログラムだ」

「えっ」

「並々ならぬ生命力を持つ生物に反応し、そのDNAを取り込むようになっている」

ピーンと来た。

「なら唾液でもよかったのでは」
「……」

無視された。

「さーせん。サンプル回収って奴ですか」

「とは、少し違うな。貯蔵しているわけではない」

「んん?なら…自己強化機能があって、そのための栄養ってことですか?」

「…遠からずだな。」

「わかんないっす」

「生殖だよ」

「せいしょく」

……。

「…生殖ゥ!?」

「そんなに驚くことか?」

「だって自分には生殖細胞無いって言ってませんでしたっけ。以前」

「無いから作るのだよ。しかし…想定外ではあるな」

「想定外?」

「理論的には不死身を1種類…スカルのDNAだけで良かったのだが。2種取り込んでもまだ足りないか…それとも馴染むのが遅れている…?」

「わかんないっす」

「体に変化はないだろう?」

「変化ある予定だったんすかまじすか」

「とにかく、仕様だ。
 また渇望反応を起こすことがあればそのDNAを取り込むことで収まる」

「馴染むか種類が足りたらどうなるんすか」

「なに、臓器が一つ増えるだけだ」

「『だけ』で片づけられる問題ではない気がすんですけど」

「何か文句が?」

「文句というか疑問…」

「好奇心に理由が必要なのか?」

「アッイエ…」

ナンテコッタイ。

別に子供を実験動物にされるのはいい。
どんなに腹を痛めても愛など持てぬ自信があるし、むしろ痛んだぶんだけ子供を憎むかもしれない。

けども。ただ、
性交とか出産とか、そういうのの当事者には、なりたくなかったなって。
いや元の世界に戻るよりは倍はマシだけど。

「ああ、そういえば」
「はい?」

ヴェルデの傍らに控えていたケイマンが、私目掛けて何かを吐き飛ばしてきた。
私の胸元にぶつかり、チャリン、と落ちたのはごつい指輪だった。

「君は新しい炎を宿したらしいな」

「はい」

「そしてすべての指輪を砕くという」

「はい」

答えながら足元を見た。
その指輪のモチーフは、ピラルク。

「匣を指輪として改良型したものだが、試してみる気は?」

「拒否権なんて?」

「承知していると思っていたのだがね」

「ンフゥwwwンフフフw」

思わず笑ってしまった。
変哲のある返しができるほど意図を理解され、それを私も理解できるということが本当に面白い。

笑いながら私は足元の指輪を拾い上げて、炎を送る。

さすればそれは、粉々に砕け散った。

バリンだなんて!
ああそんな!

「雷ピラルクが死んだ!この人でなし!!」
「成程」

私のどうでもいい子芝居を華麗にスルーし、ヴェルデは指輪の反応に頷いた。
うんまあ特にショックはない。自分の判断でやっちまったら悲しいけど、言われるままやった結果壊れちまったもんはしょうがない。
私悪くない、私にはどうしようもできなかったので忘れます。

散らばった欠片は壁から生えてきた機械が回収していった。

「こと君においては、匣は匣のまま使用するべきだということがわかった」
「不便だなー」
「凶悪だ」
「ふひっ」
「その炎を貰おう」
「どうぞどうぞいくらでも」

ボッと額に灯して見せれば、回収機器のある実験所に行けと促された。

出し損である。


…夜の炎については、聞いてないみたいですね。


まあ、目撃したのヴァニタと復讐者達だけだ。
あの未来の私は復讐者とは無縁みたいだから、おそらく夜を宿していないか復讐者の耳に入ってない=誰にも言ってない。

今ヴェルデに夜の炎は渡せないから、好都合だ。

万一、夜の炎を研究したヴェルデの発明がバミューダぶっつぶすことになったら。


最後ツナに殴られなかったバミューダはきっと改心せず朽ちる。

そしてアルコバレーノの呪いは継続してしまうだろう。


いや、どうなってもいいんだけどさ。
出し惜しむだけでハッピーエンドに行けちゃうんなら、そっちのほうがいいだろ?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ