キヒヒ!!!!
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かくして。
ほんの少しの猶予。
各々が準備を整え、そして別れを惜しむの時間が与えられた。
私からは特に誰かと積極的に交流などはしなかった。
しかし、
「あっあの!久几殿!」
「やあバジル。私なんかに寄ってきてどうしたの」
「拙者は…久几殿が食屍鬼でも、平気です!」
「ん?ああそう」
「その、この時代の拙者が残した助太刀の書に、書かれていたんです…あなたが人食いであると」
「はあ」
「殺生したからには糧とする…大和魂ってヤツですよね!」
「うん、違うね」
天然記念物とお話しくらいはしたし、
遠巻きにこの時代の黒曜組を眺めたりもしてみた。
「ん?」
「…」
偶然か一瞬だけ千種と目が合った気がしたが、一秒とせず、何事も無く視線は すれ違った。
あとはスカル。
やはり、その存在を認識したとき、非常に魅力的で自分を押さえられないほどに高揚した。
「っ……はぁーっ…」
「ひっ…ななななんだお前!?何だその…怖い目して何の用だ!?」
「っぅうーぁ…その肉が…いや、髪の毛ください」
「は?!…ああっ!お、お前か!ヴェルデの野郎が言ってた変態は!!髪の毛食わせとけって何がどういうことだよ!?」
「う、るさいあァ煩い五月蠅いうるさいその音が姿が存在がぁッ…捕まえたぁア!」
「ひぃいいいーーッ!?ヨダレが垂れっひぇぇえー!わわっわかった!分かったからッ!!」
全身からラブを出しながら飛び掛かって押さえつけたら髪の毛くれたんでそれ食ったら落ち着きました。
「すんませんでしたスカル様助かりました」
「ふぇっ?!」
それくらいのものか。
「よーし みんな揃ったね!!
そろそろ出発だが ボンゴレ匣は未来に置いて行ってもらう
取り外してくれ!!」
そして時が来た。
白の装置の前に立ち、匣を置いて、目を瞑る。
「タイムワープスタート!!」
はーあ…バミューダからどう逃げよう。
とにかく日本から出ないとなぁ。
とか考えているうちに。
私は元の時代に戻っていた。
目の前の光景に、まずは長く息を吸って、吐き出した。
「ここは」
思わず口をついて出る。
無機質な明かりと、機械の音。
一様にこちらを向く、無数のモニター。
深い、安心感。
緊張というつっかえ棒が、呆気なく消えてしまった。
肩から力が抜け、
そこで初めて強張っていたことに気付く。
足が震えて、
ぺたんとその場に崩れ落ちる。
踏ん張るのが億劫で、
固くて冷たい床にゆっくりと横たわる。
空の、小さな椅子。
目前のそれを眺め、やがて目を閉じる。
そうして、闇に眠る猫のように。
穏やかに微睡む番犬のように。
ヴェルデがこの部屋に戻ってくる時を静かに待った。