キヒヒ!!!!
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思わず姿勢を正して謝罪すれば、急に暴走した魅々子は口を閉じた。
数秒の睨みを受けたのち、
ふと、
その表情に静が訪れた。
「……コホッ
あぁ、もうぅ…この間延びする喋り方に慣れちゃってぇ、フツーの喋り方のほぅがだるいですぅ……んっん゛!」
「ご…ごめんね?」
「もぅいぃです。勝手に同一視してたのはぁ魅々ですしぃ。
……でも、やっぱり、貴女がぼくの知る久几さんじゃなくても、
…久几さんに覚えていて欲しいから、また今だけ少し頑張るよ。ぼくの口調。」
「ぉ、おう。」
ついに口調と、姿勢まで切り替わった魅々子に少し気圧される。
このここわい。
「ぼくのことは……本当に、本当に、この時代の貴女に覚えていて欲しかったけど。
いや、むしろ、今のぼくを覚えていてくれたからこその、久几さんだったのかもしれないけれど」
まあいい、と。
魅々子は口元に置いていた指先を下ろして顔を上げた。
その表情の動かし方すら、およそ別人のそれだった。
まず『様』が『さん』になってるし。
「はじめまして、久几さん。先ほどは取り乱してしまいすみません。
改めて自己紹介をさせていただきます。」
「あ、ハイ」
ピンと背筋の伸びた魅々子は、
そのまま真っ直ぐ、綺麗なお辞儀をしてみせた。
「ぼくの名前は、谷林彰人。
前世では、裕福で、少し厳しい両親のもと育っただけの、ごく普通の学生だった。
REBORN!は…存在は知っていたけど、漫画なんか読ませてくれない家庭だったから内容はよく知らないんだ。
死因は自殺。
前世を思い出したのは、赤塚魅々子にすっかり慣れた頃。
性別は、男だよ。
この時代の久几さんには、心から恋い焦がれていた。
よろしく」
「わあ。よ、よろしくどうぞ」
待って一度にいろんな情報がどっかん。
ひとつずつ処理していこうかね。
「それから、自分を殺すほど現実は嫌いで、……本当は終わりたくなんかないんだって思ってる」
さて。
「……そんなに殺気を飛ばさないでくださいよ。久几さん」
「おっと失礼」
「確かに今の貴女を殺せば、いや。ぼくがぼくを殺すだけでぼくは此処にいられるね」
「そうね。もし考えがあるというのなら、何がなんでも死なせないよ」
魅々子は、金属を擦り合わせたような声で笑った。
「貴女の殺気と敵意は新鮮だ。
それを向けられながら、絶対に死なせないと言われるのも!」
「それはよかった」
高くかすれた笑い声が響いた。
「……しないよ」
柔らかい眼差しだった。