キヒヒ!!!!

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夜が明けた。

黎明のポジションを聞いてみたら、ココに残って非戦闘員の護衛だと。
まあ大事よな。


あ、私はユニちゃんの近くに居ない方がいいと思うからどっかいきますよ。
白蘭の欲しいものナンバー1と2をひとところにまとめとくとか嫌な予感しかしない。

って言えば、メンバーも納得してくれた。
作戦開始よりずっと早い時間にキャンプを出発した。



そんなわけで。
森。

森を歩く。

落ち葉を踏みつけて歩く。

魅々子がもうすぐ還ると言うなら、それまで何にも巻き込まれず静かなとこに居ようということだ。
キャンプを離れてだいぶ経つだろうか。

しかし、まあ。 
孤立した方をトるのは定石か。

眼前に着地した、眩しい白に紛れる2つの菫色を見上げた。

肌の下が蠢いた。
おおどうしたどうした魅々子ちゃん。



「やっ♪」

「どうも」

「一人?不用心だね」

にっこにこしながら、私に手を伸ばした。
緩やかに武器も持たず炎も灯さず。

「どっちが不用心ですか」

刺激したくないので拒まず言葉だけ返せばそれは私の頬に触れた。
撫でるだけの温かなそれを文句なく受け入れていれば、白蘭はクスリと僅かな息を吹いた。

「君は飼われた猫みたいなものさ。
 害意が無ければ拒むこともなく、こうして触らせてくれるし、」

「!」

話の続きのように、役者が役に切り替わるように、
否、押さえ付けていたガスが吹き出すように、白蘭は空気を荒々しく変えた。
その指輪に炎が灯るが先か、頬にそえられた指に力が込もったのが先か。

それを知る前に、つまり捕まれる前に私は場を蹴った。

「逆であればそうなる。用心する必要なんてないじゃないか」

力一杯に空気を握り潰した手を、開閉させながらそれはからからと笑った。

「かわいいね、盗人チャン」
「脳神経内科へどうぞ」
「つれないなぁ、
 やっぱり、自由な君は冴えないね」
「それで何の用ですか?忙しいでしょうに」
「君は唯一の現実だ。取り戻す機会があればそうするのは当然だよね」
「現実なんて捨てるに限るものだよ」
「現実を生きてきた君にはわからないんだろうね
 だから残酷で憎くて羨ましくてずっと掴んでいたくてでも眩しくてそして愛おしいんだ」
「うへえ」

諦めてくれよ、といっても引かないことはわかっているが。
嬉しさ半分呆れ半分な気持ちでいれば、
そのときモゴゴと皮膚の下が蠢いた。

それはズルルっと私の腕を突き破って姿を表した。


「久几様にまったく釣り合わなぃのにぃその優しさに甘えて勘違いしてぇ、人でなしの癖にぃ」

とたんっと着地した魅々子は、私を隠すように立ち塞がった。
対する白蘭。
驚きはしていなさげだが、不機嫌そうに目を細めつつ、首をかしげていた。

「誰?」

白蘭の言葉に、魅々子は不機嫌に自分を指差した。
私に背を向けているピンクのツインテールがわずかに揺れる。

「二番に決まってるじゃなぃですかぁ。散々いじくりまわしておいてぇ、オニオンって名前まで付けておいてぇ、忘れちゃったんですねぇ〜」

「は? …オニオン?君が?


 ……う、嘘でしょ?」



「ぶはっwww」

流石に吹いた。
白蘭が呆気に取られてるよ。

確かにな、
ルッスーリアいわく白蘭のとこに居た時は
『枝のような身体、黒ずんだ肌、緑の髪』
つってたもんな。
今ムッチムチの厚化粧でピンク髪だしな。
うける。

てか白蘭の視界にもそう見せてんだね。
トレントの姿なら心当たりあっただろうし。
というか私の身体から出てきたところ突っ込まないのね。


魅々子は白蘭の反応を見て鼻を鳴らした。

「そぅでしょぉねぇ?
 魅々のことぉ、盆栽飼育してた人と久几様は違いますからぁ

 言葉も知らない、
 身体の動かし方もよくわからない、
 自分が何なのかもわからない。
 存在を見失って、ただ死が怖いから息をして、痛みに生を見出してた二番はぁ、こおんなに立派になりましたぁ」

「……ふーん。
 どうでもいいけど、心臓に埋め込んだ装置はどうしたの?」

「だからぁ、義理も無いし、返す恩も無いってことでいぃですよね」

「質問に答えてね、雑草。誰が拾って育ててあげたと思ってるの?」

「別に頼んでなぃですよねぇ。
 そもそもぉ、拾ってもらぅ必要なかったんですよぉ。むしろあのとき放置されてぃれば、もぉっと早く久几様が迎えに来てくれたのに」

わー火花散ってる。
なにこれ。
え。私の為に争わないでってやればいいの?
けんかをやめて〜って歌えばいいの?

やべー、モテ期が留まることを知らないよ。
どうしたらいいと思うシャマル先生。


ていうか白蘭引き止めちゃっていいのかな。
ええいめんどくさい。

「へいそこの白蘭ちゃん」
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