キヒヒ!!!!

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久几は息を潜めていた。

木々と呼吸を共にし、風が葉を揺らす音に混じるように、枝へと跳び移った。
彼女にとって自分以外の動く物は邪魔者でしかない。ゆえに虫一匹従えることもない。



ザクロは並盛町に降り立った。

覆っていた褐色の炎は消えていたが、その頭部には種子が入り込んでいた。
それは髪に隠され、また、その特性により誰に気付かれることもない。



ヴァニタは川平を見送った。

川平のおじさんという単語が心に引っ掛かるが、それだけだった。
過去に読んだ漫画の内容は、14年に渡る波乱万丈な血濡れた歩みの中で風化している。



魅々子はスクアーロを見限ったふりをした。

その背に種子を埋め込み、そして桃色のメイド服を翻して勘を頼りに歩き出した。
もしくは種子が久几と接触するその瞬間を待ち構えた。



スクアーロは魅々子を見送った。

無能なバカ女であるはずの人物は、この身に近付きも触れもせず、踵を返して何処かへとゆったり歩き出した。
スクアーロの五感はそのように感じたが、スクアーロはそれを疑ったし、その考えは合っていた。



百蘭は久几を見送った。

これ見よがしに置いた雲蝿に埋め込んだ発信器に気付かれ、身一つで音速を超えて逃げられた。
追っても良かったが、深追いはしなかった。
二兎を追うものは一兎をも、と。
曖昧な最上を追い確実な二番目を逃すのはあまりに愚かだ。
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