キヒヒ!!!!

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少年たちが立ち去った後、スクアーロが思い出したように口を開いた。

「う゛ぉおい…そうだ、殺しちまう前に聞きてえ。久几は今どこに居る?」

「あ?」

「カルミアと呼んでいた女だ。」

「あ゛ー、カルミア様ねぇ。
 いーーーい女だよなあ。ぐちゃぐちゃに抱き壊して絶対服従させてぇと心底思う。
 …これから死ぬ奴の戯言に付き合ってやる時間なんざねーよバーロー」

「へっ、確かにあいつはいい具合だあ。心置きなく滅茶苦茶にぶっ壊せる」

ニヤリと挑発するスクアーロの言葉にザクロはフーッと鼻から溜息を吐いた。

「そりゃうらやましいこって」

皮切りに、互いの足が地を蹴った。





走り、走り、ようやっと地上に出た少年たちの通信機が音声を拾った。
届いた音は。

「ゔお゛ぉ゛い!!」

荒々しく吠える男の声。

その声に希望を抱きかけた少年たちは、しかしその咆哮のあとに続いた音に驚愕した。

「思ったより早くケリがつく…」

聞いたことも、想像すらし得なかった音だった。

「ユニを連れて アジトから少しでも遠くへ…」

胸苦しく上がった息と、絶息しそうな息を無理やり絞り出したような声が、

「逃げろぉ…」

それが敗北を確信した口ぶりで、逃走を促していたのだから。


圧倒されていたのはスクアーロだった。

剣でもある義手は中ほどからばきりと折られて弾き飛び、匣も致命的損傷により瀕死。
身体に鞭打ち片膝で踏みとどまってはいるが、痛みは鋭く、身体は鉄錆びたように重く軋む。

「この…」

勝ち誇った顔の赤毛に見下され、ムカっ腹が立つ。

「クソがあ!!」

最後の力を振り絞り、武器もないスクアーロの悪足掻き。
それが拳か頭突きだったか、判明する前に、ザクロはその足裏をスクアーロの鳩尾に突き刺した。
ドリルのように螺旋回転する鋭い嵐の炎をまとったその蹴りは、スクアーロの雨のバリアを突き破った。

その勢いに乗せて、ザクロは嵐の炎をより強く噴火させた。

跳ね飛ばされながら炎にのみ込まれ、そのままスクアーロは跡形もなく塵となった。

久几を抱いた口振りの挑発に目に見えて腹を立てることはなかったが、
それは確かに働きかけ、ザクロはごく冷静であったが、目の前の野郎を遺体も残さず焼き付くす以外の選択肢が浮かぶことは無かった。
そうするのがむしろ当然で、何故と問われれば首を捻るような。

スクアーロが塵と消えたそのさまを、ザクロの瞳はしかと認めた。

そして辺りの遮蔽物すらも一掃された平地と静寂をその目と耳に認めたザクロは、基地から並盛町に向けて飛び立った。






嵐が去ったアジトには、
しかし、そこには2つの呼吸があった。

「……!」

一つは潰れた喉から漏れる虫の息。もうひとつは、正常な呼吸。


「久几様がぁ、ゅってたんだぁ。
 魅々子の炎わぁ、史上最強なんだって」


余裕綽々に立ち、笑う声。


「魅ぃこそが世界最強なんだって」


彼女の『正常な呼吸』は、『異常』なほどに薄かった。
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