キヒヒ!!!!

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「(さて…山本戦が少し長引いて怪我と消耗させたが。
  どう帳尻合わせてくるのか。それとも…またお飾りかな?三次元野郎)」

久几は起こしていた上体の力を抜き、頬杖をついた。
デイジーのカメラ映像と桔梗の映像どちらでもなく焦点をぼかし、遠巻きに2画面を同時に視界に入れた。



レーザーを突破した桔梗が次に目にしたのは。

鯉。

「……これは…?」

走行するボンゴレ基地ではなく、空中を優雅に泳ぎ回る錦鯉の群れだった。
纏う炎は見て取れない。
しかしながらそれが匣兵器であることは明白だった。

「…目くらましのつもりでしょうが、そうは…ッ!
 ハハン これは可愛らしい」

桔梗はとっさに後ろに下がった。
そうして己の元居た場所を見れば赤ん坊ほどの大きさをした人形が一体、そこに居た。

緋色の着物に、鼓太鼓を持った女の人形は、ポポン、と、それを鳴らした。

音色が桔梗の耳に届いた。
それを皮切りに、人形の持つ鼓太鼓から柄が生え槌のような形状になり、二人に分裂した。
うちの一体が槌を振りかぶって桔梗に襲い掛かった。
しかしそれを桔梗は当然のようにかわしていく。
かわされた人形はめげず桔梗に挑み動きながら、戦闘に参加しない一体は急激なスピードで二人四人とその数を増やしていた。

「…同じ増殖…
 ならばその炎。黎明と見て間違いない…」

数を無数に増した人形は、所狭し隙間なく、行く手のビルとビルの間を壁のように塞いだ。
桔梗に襲い掛かった人形はそこで攻撃をやめて引き返すと、その壁の一部となった。

「ハハン …人形とはいえ、人型の匣兵器など、ましてそれで柱どころか壁を作成するなど……背徳的という他ありませんね」

桔梗はもろともせずその壁の上を飛び越えようとしたが、桔梗に合わせて壁はしつこくガードして来た。
ビルより上空に飛び上がればせり上がり、横から迂回しようとすれば壁も横へとび出てきた。上下左右際限なく壁は増殖した

「ハハン
 心が痛みますが……しかし向かってくるならば壊すのみ」

桔梗は、無数の雲桔梗を一点集中。
鋭い貫通力を帯びた桔梗の花の群がその人形壁に穴を開けた。

だが、その穴は再び増殖する人形によって塞がりはじめる。
塞がる前に、桔梗は次の花を飛ばす。その花と共に自らも突っ込んだ。

ように見えた。

「……(いや、待て)」

桔梗はそのまま壁を突破する一歩手前でブレーキをかけた。

「!、おや 危ない」

停止した桔梗めがけてすかさず槌を振りかぶった人形の郡から、桔梗は飛びのいた。
桔梗はこのまま突破できたはずの壁をあえて突破せず距離を置き、交差点の中央に戻った。

人形は壁のまま動かなかったが、次は先程無害であった鯉が桔梗を襲い始めた。

「ハハン 子供だましですね…」

ビルと同じ材質となった鯉が次々突進していくのを余裕綽々にかわしていく。
そうしながら桔梗は、来た道と塞がれなかった二方向にふと目を向けた。

目視していたヴァニタは、その視線の動きにまさかと、せわしなく鯉を回避する桔梗を注視した。


その手の中では既に雲桔梗は増殖を終えていた。

桔梗はそれを、何故か、壁の張られていない三方向へ。
直線状だがかなり広範囲まで隙間なく飛ばし尽くした。

「――ッ!!
 モード・ディフェーザッ!!」

ヴァニタが叫んだ。
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