キヒヒ!!

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「スクアーロ。長くなりそうな話がしたいんだ」
「……あ゛ぁ?」

敗北の味を知り、人は成長する。

雨戦は、スクアーロにとって大きな分岐点であり成長点なんだろうなあ。
今日は彼の大切な日。大切な時。

守りたい。
ああ、あの虚飾め。今度は何やらかすつもりだろう。
恐ろしくてたまらない。


なんだかんだしてXANXUSから解放された私はスクアーロを探して、彼の個室を尋ねた。
大人しくしてれば普通に対応して椅子と缶コーヒーまで勧めてくれた。買い溜めしてあるらしく。
てか当然のように投げ渡してくれたからびっくりしたら逆に疑問符浮かべられてなにおまセラフィムかよつったら小突かれた。

「そういえば。さっきの。
 スクアーロったら彼に言われちゃ、何も言えなくなっちゃうんだねえ。
 惚れた弱み、ってやつだねえ」
「い゛?!突然何言ってやがんだ気持ちわりぃ!」
「でもあなた、惚れてるじゃない。彼の持つものに。」
「!……、」
「私はそう感じたけどね。彼の秘めたるものに惚れて、忠誠を誓って。
 あなたほどの人が、前を譲るなんてね」
「……ストーカーが。悪ィかよ」
「いんや?全然。適所さ。だって君は…場を守り待つボスというよりも、前線で指揮を執るリーダー向きだ。
 それに、8年経とうが、一度立てた忠誠は違えないなんて。その美しき誇り高さには敬服しかない」
「フン!……そうかよ」
「そうさ。スクアーロ、何も私は君の容姿のみを美しいつってるわけじゃないんだ

 君のなにもかもが美しい

 って、そう言っただろう?」
「よく言うぜぇ
 醜悪な男の本能ってやつも知らねえようなガキが」
「どうでしょ?
 それとも、あなたが教えてくれるとでも?」
「それも悪かねぇ」
「アハハハハハハハ!!嘘おっしゃい!無理すんなって!」
「な゛っ」
「アタシに勃ったら大したもんだよ」
「……、自覚してんのかぁ」
「そらこれで自覚してなかったらビョーキでしょ」
「わかんねえ奴だなあ……
 それとも男が怖くて、あえてわざとすり寄ってるってんなら、可愛いもんだがなあ?」
「さてね。深読みは大歓迎だよ。」
「……よぉ、ところで、」
「ん?」
「なんだその目のはぁ?」
「なにって、目隠しですね」

遅いよスクアーロ反応遅い。
なんか包帯目隠しグルグル巻きにされたんですよXANXUSに。

「怪我かぁ?」
「いえ。目を隠せってだけのものみたいです」
「……目隠しの上から眼鏡して意味あんのかぁ?」
「ないね。でも、大切なものですので」
「以前割られてなかったかぁ?」
「んふふふ、新しくもらったんです」
「誰にだぁ?」
「私の身体をこんな風にしてくれた人です。私だって生まれつき化け物だったわけじゃないですよ」
「……そうなのか、いや、そうだなぁ、お前みたいなのが自然に生まれる訳がねえ」

「ひょ、な、い、いひゃいれす」

ほっぺつねられた。

「あン?痛ぇのか?」
「痛覚切らなきゃ人並みには…

 って私のことはいいんですよ!ばかばか!」

「誰が馬鹿だぁ」
「何のために真面目ヅラしてきたと思ってんですか!」
「目ぇ隠れてるけどなぁ」
「上げ足やめてよお」
「それで、なんだぁ?くだらねえ用だったらぶっ潰すぞ」

そんなこと言われたらくだらねえ用創作してでも言いたくなってくるからやめて

「あなたと私の将来設計について」
「帰れガキ」
「嘘です。
 あなたにとっては多分くだらなくはないと思います」
「ほう?」
「XANXUSのことですから」
「……
 話すことなんてあんのかぁ?」
「あなただから言えることがひとつだけある。
 秘密の共有ってわくわくするよね…………んー。このフロアは人が多いな……あまり声張らないでね」
「それはオレが決めることだぁ」
「……血だよ」
「血だあ?」
「XANXUSの中にはドブネズミの血しか入ってない」
「!!」

彼の体中の筋肉が一気に収縮した。
ヒュッと、彼の喉の奥が締まる。

「……調べたのか?」
「ん?いいえ。彼の口から直接」
「話すはずがねぇ!!」

予想だにしなかったのだろう、その瞳はきっと揺れている。
見たいなあ、どんな表情をしているのだろう。

「もちろん、彼から打ち明けたわけではないよ」
「……カマに、かけやがったのか」
「鋭いね。さすが」
「なぜ、そう思った?」
「……? なにが?」
「何故そのカマをかけようと思った?!」

コーヒーを置いた瞬間、緊張しきった腕で胸倉を掴まれた。

「いつだ!
 あいつが気に食わなかったからか!?
 それとも、……判断材料になるものが、あったのか?」
「XANXUSのことになると本当に喰い付いてくるなあ
 かわいい」

見えない彼の顔を確認したくて、頬に触れる。
ああ、やっぱり強張っている。

「質問に答えろぉ!」
「初めて会った時から、なんとなくそう思った。
 思ったから、聞いてみた」
「……結局、弱みを握っていたって訳じゃねえか」
「でも、私、それでも、いや、それだからこそ彼のこと好きなんだ」
「……本当にそれだけか」
「へ?」
「てめぇがあいつに従う理由だぁ」
「従ってないでしょ。逃げたし
 それにあなたも似たようなものじゃない。彼のこと、好きだから従ってる」
「……チッ」

振りほどかれて胸ぐら突っ返された。

「だから、閉じ込めてでも目の届く範囲に置きたがった訳かぁ
 ……XANXUSがてめぇにどうもご執心だった説明が、これでついたぜぇ」
「それはよかった。
 どうしても話しておきたかったんですよ、あなたには」
「……」
「やっぱり、秘め事って、共有者が一人いるだけでだいぶ違うと思うんですよ
 無知な輩の言葉とかが鼻についたとき、愚痴の一つも吐き出せる相手もいないなんて、ストレス溜まるじゃないの
 かつての仲間…むこうの薄明に裏切られてから不信に陥ってないか不安で。
 だから、別の方向でバランスとれないかなって」

彼ははっとした様に目を張り、しかしすぐにこちらを睨んだ。

「おかしいなぁう゛お゙ぉい」
「…………ん?」

今度は髪を引っ掴まれた。
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