キヒヒ!!

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スクアーロから争奪戦の説明を受けて、私も並盛組との関係を話した。

ある程度ぼかしたりはしてるが、それでもまあそういうことで納得していただけた感じです。

暇潰しと気分でいろいろ詐称して学校いこうとしたところが偶々並盛でした的な。

さて並盛に帰ってきたからにはうろつきたいところがいくつかあるから出かけようかな。
まずは黒曜ランドにでも。


退室すべく扉に向かう。

「待て」

しかしXANXUSとすれ違う前に足をつき出されてとおせんぼされた。
あーこのまま進んでたら足ひっかけて転ばされてたわ。

「何でしょ?」
「どこに行く」
「どこって、行きたいところへ」

「う゛お゙ぉい!」

なんか背後で吼えられた。
吼えられながら、足早に歩み寄られ、後頭部をガッと掴まれた。

「信じて送り出すとでも思ってんのかあ!?」

なんで止めるかなあ

「そんなあ!信じて送り出してくださいよお!変態調教にドハマリしてアへ顔ピースビデオレター送ったりなんかしないですから!ね!」
「フーゾク?」
「ではないですけど……あ。あのゲームってこっちにはあるのかな?探してみようか……あのギャグゲーのバックボイスが久しぶりに恋しくなってきたぞ……」
「何ブツブツ言ってんの?」
「あいや、なんでも」

ガシャン、と、陶器のようなものが割れるような、突然の破壊音が鳴り、目を向ける。
それは植え木の悲鳴かな。
XANXUSは観葉植物の幹をひっつかんで壁に叩きつけていた。
植木鉢が無残に砕けてしまっていた。

「餓鬼」

「うい?」

「もう一度だけ聞いてやる。

 どこへ行く」

「…………服従が条件なのは、屋根を借りるため」

「ああ?」

「日本という治安良き安全な国に来たからには、もう屋根とかいらないんですよ。

 ……だから、あなたに従う義理はない。いや、従うか否か、私が決めるんですよ」

「!、」


後頭部を掴むスクアーロの腕を殴ると同時に勢いよく頭を強く頭突きよろしくガツッと押しつけてから間髪入れず引くことで外す。
前につけた勢いのまま、道を塞ぐXANXUSを避けて扉を破り、退室する。

追ってくる足音に振り返れば、鬼のようにおそろしい顔をした彼が追ってきていた。
それに続くように、スクアーロとベルも追ってきている。

かまわず廊下を走り抜ける。
走り抜けている中、スクアーロの方から機械音が聞こえた。無線か、放送か

「う゛お゙ぉおおおおおおいィ!!
 誰でもいい!!通路を走るガキを捕まえろぉ!
 いや!まずは窓と出口を片っ端から塞げぇ!!一歩も出すんじゃねえぞぉ!!」

無線だ。
建物内のいたる各所から、こもった爆音が鳴り響く。
人がどこに待機しているのかよくわかった。

鼓膜が御陀仏しそうな酷い音量だが、なにしろ滑舌がいい。
指示はしっかりと通ったことだろう。

関係ない。

今は大切な時期だ。
むやみに傍について、なにか支障をきたされては困る。

たとえば武器の手入れなどの時間を削ってしまう、そして筋書き通り進まなくなることは本当に避けたい。

判らないことは怖い。誰が死に生きるかわからない。
この物語は最終的にハッピーエンドなんだ。
それを、目先の情ごときに負けて揺るがしたくはない。

各々の時間を過ごして貰うためにも。

最大出力で通路を走る。踏みしめた床はひび割れ、呼吸などできず、皮膚がチリつく。
強い向かい風を識別した眼鏡は変形し、ゴーグルとなって眼球を守り視界を確保してくれる。

ヴェルデ様にもらっているこれが、普通の小物なわけがない。

XANXUSとの距離をぐんぐん離し、来た道を戻る。

外への扉が見える。
その前に道を塞ぐ沢山の隊員が居る。

一人も殺してはいけない。怪我をさせてはいけない。
スピードのまま飛び越え、鍵のかかっているであろう扉を派手にぶち抜いて、出ていく。

濡れた土を踏み、大きく空へ跳び出す。

この身を呑み込み覆い隠してくれる黒の大空へ向かって。


まるで大砲のように、私は打ちあがった。


曇っているが雨は止んでいた。
またたく光ひとつない、良い夜だ。

勢いが落ち始め、ゴーグルが眼鏡に戻る。

そして死にゆく勢いとともに、私は落下していった。

いやー、良い放物線を絵描けたと思うよ。
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