キヒヒ!!
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「は……ッ」
おはやうございます。
すっかり体温の移った床の感触で、自分が目覚めたことを認識した。
掛布のようにしていた上着を持って体を起こす。
ガリガリと頭をかく。
窓を見れば日が落ちていた。
しかしまだまだ横になっていられるぞ。
上着をかけ直して、起こしていた体を再び倒す。
片足を抱えて心地の良い空虚間と、贅沢かつ甘美な退屈を味わう。
幸せだ。本当に。
クソ三次元では欲しても欲しても欲しても欲しても手に入らなかったものが、ここにある。
無為な一日を過ごすことのなんと贅沢なことか。
無生産であっという間にすぎていく時の愛おしいことこの上無しだ。
瞳を閉じる。
「…み゛ょ!?」
いでえっ!?折りたたんだ指ごと押しつぶされた痛みで目が覚め、また眠っていたことに気付いた。
見上げれば、XANXUSが私の手を踏んでいた。
帰ったのか。
モスカもいるね。
笑顔笑顔
「おかえりなさい」
おっと寝起きで媚びるような高音が出てしまった。
いつもの声だと枯れてしまうからつい無意識に調整してしまうんだ。
「…………」
ピクと眉を動かしたと思えば彼はより体重をかけてきた。
「あだだだだ!いだい!ぐりぐりせんといて!!」
「餓鬼。」
「うい?」
会話に集中するため痛覚消す。
「部屋から出たか?」
「ないです」
「だろうな。窓をあけられた形跡がない。何故だ?」
「やっぱり…まずかったですか?」
「何故出て行かなかった?」
「出ろとは言われてなかったので…どうしたものかと…」
「……そうか」
足が退かされた。
ううん結局正解だったのかどうなのだろうか。
目も覚めたので、かけていた上着を抱きこみながら体を起こす。
あ、そういえば
「ところで、ムスクやバニラの女がお好みなんですね。あ、でもフローラルも微かに…」
「……何が言いたい」
「女って嗅覚過敏なんですよ。
あー…五〜六人くらいですかね…すごいですね」
「文句あんのか…?」
「いえ。ただ、雌と香水の香りが酷く混ざって残っているので…消臭剤持ち歩くかソーププレイおすすめしたいです。」
「るせえ。勝手だろうが」
「もちろん強制する気はないのでお好きなように。私が勝手に気分悪くしてるだけなので…」
女ひっかけてから帰って来たのか、香水とフェロモンビシビシつけて帰還してきたXANXUS様。
お若いようで。
「あー…すみません。ちょっとクラクラしてきました」
自分以外の人がつけてる香水のにおい苦手。
脳に響くモスカの稼働音が今は不快だ。