キヒヒ!!

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「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。
 ノーノ」

目前の兵器を見上げる。

「今のあなたに意識があるのかは、わかりませんが。」

彼の私室。
XANXUSはシャワーを浴びに退室し、モスカとともに取り残された。

復讐の証であり苦痛の断末魔でもあるこの兵器を手元においておきたい気持ちは、よくわかるよ。

「なあ9代目よ。あなたは血も涙もない聖人のような人だ。

 どうして、あなたはあのとき、彼と彼の母親を受け入れてしまったのか。

 時として死は慈悲なる救済であるとかいう腐った寝言を謳う気はないが

 それでも、あなたはあのとき母子を拒絶し殺しておくべきだった。そう私は思うのです。

 あなたの残酷な優しさが、あなたの息子を怪物にしてしまった。
 あなたの息子は憎悪に取りつかれた化け物だ。

 しかし…安心するといい。
 彼より愛しい人を、私は知らない」

優しいと崇められ縋られる彼に、ずっと物申したかったことを吐き出していた。
果ての無い情を持つ人は恐ろしい。大嫌いだ。

唸るような稼働音が肌を震わせる。
物言わぬ機械の音の心地良いことよ。


彼を待つ。

彼の目に私がどう映っているのかはわからない。が、必要とされるのは、嬉しいことだ。


「おかえりなさい」
しばらく待てば、髪の濡れた彼が戻ってきた。

「XANXUS様、今の私は少しだけ目がいいのです」

「……あ?」

「これ。9代目でしょう」

「だったら、なんだ」

ありゃ?すんなり認めた。

「やー、どうもしませんけども。ただの確認です」

「だろうな」

とくに気にするでもなく、か。
言いつけを守り、彼に視線を送り続ける。

半分偽物のリングが、彼の肌の上で鈍く光っていた。
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