キヒヒ!!

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「オレを見ろ、餓鬼」

「う……?」

従って目を開ければ、彼は真っ直ぐ私を見ていた。

何を言うでもなく、ただ、そうしていた。

気恥ずかしく感じ始めたところで、顎から手が離れた。

とっさに身体を引いて視線をそらせば、間髪入れずに首を掴まれ引き寄せられた。

「グがッ」

「誰が反らしていいと言った」

「すみませっ」

言い終わる前に、喉を突っ返された。
仰け反って、数歩下がる。

なんかもう何がしたいのかサッパリわからんのだけれども、目を離さず。

改めて彼の正面に立つ…のは頭が高いから片膝ついて見上げてみた。


まるで鑑賞するような視線を受けた後、彼はまたグラスから酒をあおった。
カンッ、と空になったグラスがサイドテーブルに打ち付けられた。

こいつバーボンストレートで飲んでやがる。
酒の勢いに任せて何かする気か。

「餓鬼」

「はい」

「その目、何故だ」

「何故って、何がですか」

意図がわからず、聞き返せば、ぐわっと斬り込むような視線をいただいた。
こわあ

「お前はオレがブラッドオブボンゴレではないことを知っている」

「ええ。存じております
 その血の一滴も流れてはいないあなたがボスと認められることは、しきたり上ありえないということも」

苦い顔をされた。
なんだ、年相応の顔もできたのか。

「それでも、そんな目でオレを見るか」

「どんな目かは自分でもサッパリなんですが、そうですね。

 あなたは知らないでしょうが、私は昔、あなたという存在に救われたことがあるのですよ

 だからあなたがどんな地位だろうが関係なく、大好きです」

「話せ」

「それを言うと長くなるうえ全てがこんがらがりまくるので嫌です」

「二度も言わせんのか」

「こちらの台詞です。

 あの私の痕跡は絶対に持ち込みたくない。

 吐かせようとしてもダメです。私痛覚切れますし死にません。いや、今の私なら死も消滅も怖くはない」

「……生意気な餓鬼だ」

「すみません」

「反らすな」

「どうしてそこまで私の視線を?」

「黙れ」

「ごめんなさい」

「……餓鬼。今夜は付き合え」

XANXUSが立ち上がった。
目前に、ずいと手の甲を差し出して。

「どういった意味で?」

「オレを見ていろ。それだけだ」

「穴は貸しませんよ」

「要らねえ」

「であるならば、喜んで」

彼の手を取って、甲に唇を落とした。

それから改めて見上げれば、そのまま手を引かれた。これまた乱暴に。

いとおしく思うのはおかしいだろうか。

勝手に彼に救いを見いだして、勝手に勇気を貰っていたクソガキ時代が懐かしい。

ああ、今は何て幸せなのだろうか。
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