キヒヒ!!

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明るい。


「………!」

「ら…………?、あ……」

「オレがわかるか?
 ベッラ」

「……チャオ、ベッロ」

「ッ!!、良かった…ッ」

バッと強く、だがとても優しく、上体を掬われるように抱きしめられた。
黎明に握られていた手のぬくもりは、大きなランチアのものとすり替わっていた。

…って。

「ここは」

やわらかい。
軽い身体。スッキリした脳。
白くて清潔なにおいのする布団。
スズメの鳴き声と、時計の音、窓から見えるのは日の出前の薄明り。

「ボンゴレの家だ」

「……眠れていますか?」

「は?」

「…隈、ちっとも薄まってないじゃないですか」

「……。」

伝わらなかったか。

「もう少し寝ていたいです。
 すこしだけ、一緒に眠りません?」

抱き寄せられたままなのをいいことに、彼の背に手を回して布団へ背中を打ち付ける覚悟で思い切り倒れ込む。

「ぐわっ!?」

だが彼はとっさに床に手をついて、私の背が打ち付けられるギリギリのラインで止めてくれた。

「………お前は……ッ」

抗議の意を無視して私は再び目を閉じる。
彼に回した腕を解いて、その分、繋がれた手に力を込めた。

そうすれば、彼は諦めたような溜息を吐き、添うように横になってくれた。

優しい。

では遠慮なく寝返って彼の胸に額をつけた。

「おい、」
「……眼鏡。どこやりました?私の」

なんとなく、顔を隠したくなった。
顔を隠すと、少し落ち着く。

「…すぐそこの棚の上だ。」
「そうですか。よかった。
 ……私、海水でベタベタずぶ濡れでしたけど、誰が洗ったんですか?」
「お前が再び現れたときには、濡れていなかった」
「そうですか。

 ………私、ここに、
 戻って、これたんですよね」

「そうだ」

「本当に?」

彼のたくましい腕が、また強く、優しく、私を抱いた。

「……確かに居る」

「……………。」

彼の鼓動と体温をはっきりと感じた。
このリアルさは…きっと、夢なんかではないだろう。
そう願いたい。

涙が出た。

嬉し泣きなんて、信じてなかったのに。

みっともねぇ。

押し殺し切れない嗚咽が恥ずかしくて、必死で喉を絞った。
苦しい。
喉と胸が、熱い。

ランチアは静かに私の頭を強く抱き込んでいてくれた。



ぐおおおおおおおおおお屈辱だあああああああああああやめろおおおおおおおおおおおお涙とまんねぇえええええええええとまりゃぁあああああああああああああああああああああちくしょぁああああああああああああ!!!
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