キヒヒ!!

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XANXUSは、いつものように抱えの女を抱いてから帰路についていた。

事が終わり、通路に待機させていたゴーラ・モスカを伴って寝室へ向かう。

XANXUSは女を寝室に連れ込まない。
事が終われば女は邪魔で、汚れたシーツで眠るのも彼にとっては耐えられないことだった。

そんなXANXUSが自らの寝室に仕事目的以外の女を入れたのは、久几が初めてであった。

ましてや、閉じ込めるだなんて。
どうかしている。

何故このような真似をしたのか、彼自身にもわからなかった。

寝室のカギを差し込み、回す。

ドアノブをひねるそのときの彼は、得体のしれぬ不安感とともにあった。
さもあたりまえに窓を破って、飛び降りて脱出しているかもしれない。
あの不死身が落下を怖れる理由はない。

忽然といなくなっていて、いつも通りの部屋が広がっているかもしれない。
開けたい気持ちと開けたくない気持ちが拮抗する。

しかし腕はすんなりいうことをきき、いつも通りの手癖で、スムーズに扉を開けた。

生理的でないまばたきをして、XANXUSは部屋に入り、久几の姿を探した。

彼女は、すぐそこにいた。
最後に彼女がいた場所と同じ場所で、最後に見たときと同じように、上着を羽織って眠っていた。

かつて自分のものであった上着。八年間共に氷の中にあったもの。
新調した上着が届いたから、元々処分するつもりでいた。
最後も、どうせ捨てるものを受け取るのが億劫で、処分しておけという気持ちで押し付けたものだ。

気持ちの悪いことに大切にされていた。
まともな手入れをしていないのは一目瞭然だが。
そこまで嫌な気がしないのが不思議だった。


しかし、ずっとこのままだったのか?
閉じられた窓を調べる。
塵の様子を見るに、開けられた形跡がなかった。

窓際から戻って、久几のもとへ近寄る。
ボサボサの髪を散らして、浅い寝息をたてていた。

小さく丸まった指先を見たとき、今まで感じたこともないような感覚がした。
得体の知れない煙たく不快な、それに心乱されるのが嫌で。
それに重ねて、久几の指を思いきり踏みつけた。

「み゛ょ!?」

肩を大きく痙攣させて、それは目覚めた。

室内に視線を泳がせたあと、久几は視線を登らせた。
目が合うと、彼女は今まで見たどれにも当てはまらない、やわらかい笑顔を浮かべた。

「おかえりなさい」

本当にこれは自らが知る彼女であるのか、一瞬疑った。
へらと力なく笑み、とろけそうな眼差しとともに発せられた声は、甘怠く、しかし枯れてはなく。

馬鹿馬鹿しい。
かき消すように、足に更なる力を込めた。

化け物の分際で痛いとわめいた。
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