虹色蝶々

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蝋燭に照らされる女の子の顔。

まだ幼く、私と同じくらいの歳だろう。

「ぐっ…!」
「深い傷…酷い…」

鎌で付いた傷は深くてすごく痛い。

パックリと割り開き、大量の出血を及ぼすと共に、少量の脂肪が見えている。

「…焼酎、入れるけど、大丈夫…?」

恐る恐る、聞かれて、悪寒が走るも頷く。

「…いくよ」

ぎゅっと目をつぶって痛みに耐える準備をする。

でも、

「っ、っあああっああっあああああああああっ!」

やっぱり、痛い。

蝋燭が、悲鳴に反応するかのようにゆらゆらと揺れる。

それとも、私のこんな惨めな姿を見て笑っているのか。

「っ…ぃぎっ…ぐっ…だ、ぁあ…」

押し殺すように、声を抑える。

あまりの痛さに泣くことは、何年ぶりだろうか。

「あと、少しだから」

額に汗が滲んでいる、女の子の顔をうっすらと涙が覆った瞳で、眺める。

意識が、飛びそうになるのを我慢しながら、息を荒くする。

「はぁはぁはぁはぁっ」

嫌な汗が流れ始める。

そこで、治療がやっと終わった。

「…終わったよ」

傷の回りが赤く腫れた腕。それをぼーっと見て、ここで何をしているのかを頭で再確認する。

…そう考えると、名前も知らない私にここまでしてくれた女の子に感謝の気持ちを伝えたい。

そこは、ちゃんとしておきたい。

「…あ、りがと、…」

首を少し落として言うと、優しく支えられる。

「だ、大丈夫?」

顔を覗き込まれて、その大きな目に吸い寄せられそうで、顔を背けたくなる。

でも、女の子は、とても可愛かった。

「…」

お礼、したつもりなんだけどな。
そんなことを思いながら目を閉じると、一気に睡魔が襲ってきた。

そして、私はやっと意識を失った。

…羽が、疼き始めるのも無視して。





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