虹色蝶々

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女の子…おぎちゃんは、声がハスキー。

それに顔が小さい。

「腕、見せて」

毎朝の日課の腕のチェック。

腫れが引いてきていて、傷も塞がってきた。

「ん、いいね、」

また布を縛り直す。

…あれから、羽のことは、全く聞いていない。

数日過ぎると、もう遠い昔のように感じられる。

「ありがとう」

おぎちゃんの声が、近づいていたゆりあの耳に掛かり、ゾクッとする。

「…?」

震えるゆりあを、不思議そうに見て、顔をかしげるおぎちゃん。

…憎いけど、可愛い。

「…さ、今日も頑張りますか」

よっこらせっと、体を上げて外に出る支度をする。

「あ、ゆりあ、私も、」
「ダメ」

追われてるんだから、ダメでしょ。

おぎちゃんから、ある程度のことは、聞かせてもらった。

でも、やっぱり、羽のことは言ってくれなかった。

「…」

少し考えてから、外に出る。

「いってきます」
「いってらっしゃい」

何気ない返答に、頬を緩ませて、扉を閉める。

空は澄み切った青空だった。

「よっ…」

ゆりあの親は、位の高い武士、貴族だった。

そのため、財産も多く、今でさえも苦労はしていない。


…ゆりあは家出したんだ。

幕府から。

部屋を掃除しようにもどうすればいいのかわからない。

昔は使用人がやってくれたから。

「…」

見つけた川で、水をくみながら水面に写る自分の顔を見る。

「…」

母のような大きな目。

親に似ているこの顔が、大嫌いだった。

当たり前なことなのに。

「…くそったれ。」


水面を、グーで殴った。




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