SKE48

□不幸でも幸せに
1ページ/1ページ


彼女の涙が、笑顔に変わりますように。

「…っ…おぎ、ちゃん…!」

そう思っても、うまく動かない。

可哀想に、そう言って見てくる親戚の人。
啜り泣く母。
目を赤くしている妹。
目を合わせない父。

みんな、見えてる。

なのに、

「…」

声が、出なかった。


事故に遭った。

原因は、ゆりあを庇ったから。

左半身が麻痺していると、言われた。

声が出ないのは、精神的ショックによるものだと、言われた。

「…おぎちゃん」

毎日、来てくれるゆりあ。

その目はいつも腫れている。

「…」

声が出ないから、紙に書いて会話をする。

[学校は?]
「休んだよ」
[どうして?]
「…おぎちゃんのそばにいたいから」

ぎゅっと抱きつかれて、右腕で、抱きしめ返す。

「…ごめんね…っ…」

そう言って、泣くゆりあ。

「…」

言葉が使えない今、どうすれば、気持ちが伝わるのか、考えた。

でも、やっぱり、ひとつしか浮かばなくて…

「ちゅ、」
「…!」

泣くゆりあの耳に、キスをする。

すると、驚いたゆりあが私の顔を見てきた。

[大丈夫]
と、口パクで伝える。

すると、ゆりあはまた泣きそうになった。

そんなゆりあの頬をつまんで上に上げる。

「…っ…うん、うんっ…」

泣きながら笑うゆりあに苦笑する。

泣いちゃ意味がない。

でも、笑ってくれるなら、いいや。


…障がいを持って、初めて気がつけたこと。

それは、沢山の心を育ててくれた。

健常者では、感じられなかった事が、沢山、感じれて、嬉しかった。

「綺麗だねぇ、おぎちゃん」

紅葉を、見に行った時、飛び切りの笑顔で笑ったゆりあの顔を見て、思った。

君がいてくれて良かった、と。

「…ゆ、りあ」
「…!」

そして、私はまた、成長する。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ