SKE48
□不幸でも幸せに
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彼女の涙が、笑顔に変わりますように。
「…っ…おぎ、ちゃん…!」
そう思っても、うまく動かない。
可哀想に、そう言って見てくる親戚の人。
啜り泣く母。
目を赤くしている妹。
目を合わせない父。
みんな、見えてる。
なのに、
「…」
声が、出なかった。
事故に遭った。
原因は、ゆりあを庇ったから。
左半身が麻痺していると、言われた。
声が出ないのは、精神的ショックによるものだと、言われた。
「…おぎちゃん」
毎日、来てくれるゆりあ。
その目はいつも腫れている。
「…」
声が出ないから、紙に書いて会話をする。
[学校は?]
「休んだよ」
[どうして?]
「…おぎちゃんのそばにいたいから」
ぎゅっと抱きつかれて、右腕で、抱きしめ返す。
「…ごめんね…っ…」
そう言って、泣くゆりあ。
「…」
言葉が使えない今、どうすれば、気持ちが伝わるのか、考えた。
でも、やっぱり、ひとつしか浮かばなくて…
「ちゅ、」
「…!」
泣くゆりあの耳に、キスをする。
すると、驚いたゆりあが私の顔を見てきた。
[大丈夫]
と、口パクで伝える。
すると、ゆりあはまた泣きそうになった。
そんなゆりあの頬をつまんで上に上げる。
「…っ…うん、うんっ…」
泣きながら笑うゆりあに苦笑する。
泣いちゃ意味がない。
でも、笑ってくれるなら、いいや。
…障がいを持って、初めて気がつけたこと。
それは、沢山の心を育ててくれた。
健常者では、感じられなかった事が、沢山、感じれて、嬉しかった。
「綺麗だねぇ、おぎちゃん」
紅葉を、見に行った時、飛び切りの笑顔で笑ったゆりあの顔を見て、思った。
君がいてくれて良かった、と。
「…ゆ、りあ」
「…!」
そして、私はまた、成長する。