AKB48

□不安
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「ぱるるさん、」
「ん、なに…んっ…!?」


テレビを見ていると、突然噛み付くようなキスが送られてきて、少し目を見開く。


すぐに離される唇。


柔らかい感触の余韻に浸りながらも、頭の中では疑問符。


「…りっちゃん?」



彼女にしては珍しい少し強引なキス。


嫌いじゃないけど、少し心配する。



「何かあった?」
「…いえ、なにも。」


そう言いながらも、目線は下に向いていて目は全く合わない。


「りっちゃん、」


名前を呼び、頬に手を添えると、チラリと見つめられる。


その目は少しだけ潤んでいて、泣きそうだ。


…やっぱり何かあるんじゃないか、と軽く溜た息を吐く。



「…どうしたの?」


できるだけ優しい声で問いかけると、りっちゃんの目から大粒の涙がポロリと零れた。


ギョッとしたけど、あえて顔に出さずに言葉を待つ。



「ぱ、ぱるるさんは、本当に、私のこと好きですか…?」
「え?」


意外な質問に、頭を傾げる。


それから数秒経って、なんだかムカっときてしまった。



頬に添えていた手を、両頬を指で挟み掴む形に変え、視線を合わせるために少し上を向かせた。


両頬を挟まれたことによって、可愛い唇が突き出したその顔は、倍に可愛い。


でも、今はそんなこと言ってる暇ではない。



「…ねぇ、私たちの関係って何?」
「…恋人、です、」
「だよね。なのになんでそんなわかりきった質問してくるのかな。」
「だ、だって…」
「好きじゃないと、付き合わないでしょ。」
「…ぅ…」


『ばーか』と口パクでそう伝えると、またみるみるうちに溜まっていく涙。


「だ、だってぇ…」


ポロポロと本格的に泣き始めるりっちゃんを見て、少し頭を抱える。


なんでそんな考えに至ったのかが見えてこないから、余計に困る。



「誰かに何か言われたの?」


少しでも落ち着くようにと、頬から手を離して頭を軽く撫でながら聞くと、小さな声で呟かれる名前。


「…優子さんに…」
「…」


…あぁー、なんだか、怒りたくても怒れない人に言われてるじゃん…


「…なんて言われたの?」


でも、とりあえず、なんて言われたのかが知りたい。


多分きっとそこがりっちゃんが泣く程まで追い詰めることになってしまった一番の鍵だと思う。



「…誰に関しても塩対応なぱるるが、本気ですきなのかなんてわかんないぞーって…」


あぁー、優子さーん!



「…はぁ…なるほどね。」


いろいろぶっ込んできますね。


流石、女の子大人数グループのAKBを引っ張ってきたことだけはある。


容赦がない。


いろいろと。



「それで不安になったの?」
「…うん、」


ぐす、と必死に泣き止もうとする姿はまるで小学生。


どうしたものか、と頬を少し掻く。



「…あのさ。私、遊びで付き合ってあげる程、軽くはないから。」


りっちゃんのこと、本気で好きだよ。


そう、顔を覗き込んで伝える。


冗談で付き合ってあげてる、なんてことはない。


私だって、りっちゃんのことが好き。


「それに、塩対応とかそういう表面上のキャラに流されなくても、りっちゃんは私の事たくさん知ってくれてるでしょ。」
「…ぱるるさ…あいたっ!」


途中でなんだか自分が言った発言に対して気恥ずかしくなってきて、輝くような瞳で見てくるりっちゃんの額にデコピンをくらわせた。


「ぃ…いたぃ…」


額をスリスリと撫でる彼女を見て、目を細める。



何を考えているかって?


私の彼女可愛いなぁって。



「…だから、心配しなくてもいいんだよ。私は、りっちゃんが好きだから一緒にいるんだし。」


涙の跡で、少し赤くなっている頬にキスを送る。


「だから、泣かなくていいよ、」


目元を細め、ポンポンと頭を撫でて微笑むと、りっちゃんも笑顔になってくれた。


「うん!」



やっぱり、りっちゃんは笑顔が似合ってる。


好きな人が泣いてるのは、胸が痛むことなんだな、なんて、また一つ勉強になった。



「今日、ぱるるさん甘いですね!」
「りっちゃんが泣いてるからね。」
「えー、なら私ずっと泣いておこうかな」
「そんなことしたらまたデコピンするからね」
「えぇっ!地味に痛いんですよー、ぱるるさんのデコピン…」



また、いつもの何気ない会話が始まっていっている気がして、相手にバレないようにふっと口元を緩ませた。

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