AKB48

□本当は
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桜の木の下には死体が埋まっている。


そんな話を聞いたことがある。

そして彼女は、興味をそそられたらしい。

「試してみる?」

なんて。

「はは、冗談きついっすよー、ぱるるさん」

流石に私は怖いので、流そうとしても、流せない。

結果、夜桜である。

「…」

なんだろ。

少し前の明るい時間帯だったら、きゃっきゃしてただろうけど、今はとてつもなく帰りたい。

ライトアップがある意味怖くなっていた。

「ぱ、ぱるるさん、帰ろう?」

人はちらほらいるけど、やっぱり怖い。


「…りっちゃん。」

ぱるるさんの声が少し穏やかになる。

単純だろうか。

その声を聞いて、ほんの少しだけ怖さがなくなった。

「私が、死んだら、桜の木の下に埋めて?」

そういう彼女の顔は、後ろで光るライトのために、伺いしれない。

でも、きっと笑ってる。

「…私、犯罪者になっちゃいますよ」

今でも結構やばいのに。

距離を縮めて、彼女の頬を撫でる。

けど、撫でられない。

少しまだ肌寒い中、彼女の服は、薄い病院の服。

私達は、病院を抜け出して、ここに来ていた。

もちろん、バレたら叱られるから、危ないけど、バレない。

「…そうだね」

薄く、笑うぱるるさんに、私も笑いかける。

ぱるるさんの身体は、もう、本当に危険な状態らしい。

「…りっちゃん」
「はい、」
「…私の最期、ちゃんと見てね」

ぱるるさんは最近それしか言わない。

それでも、私は頷く。

「わかってます」

…辛い。

けど仕方ない。

彼女のいうことなら、全部叶えたい。

「…りっちゃん、」
「はい、」
「…側にいてね」
「当たり前ですよ」

君が嫌になるくらい、ずっと側にいてあげる。

君の体をマッサージしながら、私の楽しい話を沢山してあげる。



…それから一ヶ月後、三年間植物状態だった彼女は、安らかに、息を引き取った。

十八歳だった。
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