進撃の巨人

□幸せな秘密の逢い引き
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「入りなさい」


私が団長室のドアをノックすると、エルヴィン団長はいつも自らドアを開けて私を招き入れてくれる。
そしてドアを閉め、そのまま私が持ってきた書類を受け取ると柔らかく微笑むの。


「いつもすまないな」


そして優しく私の額にキスを落とし、また自らドアを開けてくれる。


「また頼む」


優しい眼差しで見送られ、私は来た道を戻る。

暫く来た道を歩くと不意に曲がり角でリヴァイ兵長とバッタリ会った。
私の顔を見るなり兵長は何か思い出したのか一瞬上を見た後、私にくいっと顎で“ついて来い”とジェスチャーしたので歩き出すリヴァイ兵長の後ろをついていく。


「お前…いい所に来たな。丁度エルヴィンに持っていってもらいてぇ書類がある」


兵長は前を向いたままそう言い自室へ入ると数枚の書類を私に手渡した。
すると今度はハンジ分隊長が向こうから歩いてきて、私を見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。


「丁度よかった〜私も書類頼むよ!今から少し用があってさ〜」


ハンジ分隊長からも数枚の書類を渡され、私はお二人に敬礼する。
するとリヴァイ兵長が怪訝そうに眉間に皺を寄せた。


「しかしいつからお前は書類運搬係になったんだ、エルヴィンは直接顔を合わせて話さないといけねぇ書類以外はお前に渡せと煩ぇしよ」

「まぁ細かい事は別にいいじゃないかリヴァイ、こっちは凄く助かってるんだからさ!」

「…確かにな」

「だろ?それじゃ書類は頼んだよ〜!」


リヴァイ兵長とハンジ分隊長と別れ再び団長室へ向かう。
さっきと同じようにドアをノックすればまたエルヴィン団長自らドアを開けてくれる。
少し前、声も聞いていないのに何故私だと分かるのか質問したら、“ノックの仕方で君だと分かる”と嬉しいけれど何だか恥ずかしくなる返答が返ってきた。


「今日は私達への協力者が多いな、今度は誰だ?」


エルヴィン団長に書類を渡しながらリヴァイ兵長とハンジ分隊長ですと答えると、頬に優しくキスされそのまま抱き締められた。
頭上で、エルヴィン団長が小さく笑う声が聞こえる。


「そうか…また君をここへ呼び戻してくれたんだ、リヴァイとハンジには感謝しないとな」


そっと頭を撫でられて、私も団長の胸に頬を寄せる。

これは私達の幸せな秘密の逢い引き。
私達がお付き合いをしているのはまだ内緒にしているから、私はエルヴィン団長への書類運搬係にエルヴィン団長本人から任命された。
書類を持っていれば、団長室に頻繁に出入りしていても怪しまれない。
私達は堂々と会えるし、皆さんの負担も軽減出来て一石二鳥だ。


「あまり長居は禁物だな」


まだそんなに長居はしていないのにエルヴィン団長はそう呟いて私を離す。
もう少しだけと私がいそいそ近寄れば、ちゅっと唇にキスされやんわり止められる。



「私が我慢出来なくなると困る…早く部屋へ戻りなさい」



そんな優しく微笑まれてそんな事言われたら…抗う事なんて出来ない。
頬を熱くしながら頷き、私はどんどん熱くなる頬を両手で押さえながら急いで団長室を出る。
そんな私の様子に、またエルヴィン団長が小さく笑う声が聞こえた。


「おい、丁度いい。エルヴィンの所へ書類を頼みたいんだが…


暫く走るとそんな声がかけられ、心の中でごめんなさいと謝罪しながらミケさんの横を走り抜ける。

私の真っ赤な顔を心配してくれたのか後ろからミケさんの私を呼び止める声がしたけど…また心の中で謝罪しながら私はそのまま走り去った。








【幸せな秘密の逢い引き】
エルヴィン

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