進撃の巨人

□お掃除の教え
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踏み台に乗り、本棚の上の埃をはたきで掃除していると舞い上がる埃に小さく咳が出た。
背の低い私には踏み台に乗っても大きい本棚の上を掃除するのは結構大変だけど、出来なくはないから背伸びして頑張って掃除する。
舞い上がる埃に悪戦苦闘しながらも、これが綺麗になっている証拠なのだと思うと嬉しくなって背伸びを継続しながら夢中で埃を払っていると急に体がガクリとバランスを崩した。

夢中になり過ぎて踏み台の大きさを考えず足を横に移動させてしまったらしく、私の体重は踏み台の端に偏り過ぎてバランスを保てなくなった踏み台はガタンと斜めに傾いた。
あまりに咄嗟の事で本棚に掴まる事も出来ず体が倒れていって、反射的に目をつぶる。

けれど覚悟していた痛みはなくて閉じていた目をそっと開けると…私の体は逞しい腕に抱き止められていた。


「おい、何やってやがる…気を付けろ」


急いで上を向くと目と鼻の先にリヴァイ兵長の呆れたようなお顔があり、顔を熱くしながら急いで姿勢を正し謝罪する。
兵長は私が持っているはたきを取り上げるとつい今しがた部屋に入ってきたエレンの胸にはたきを押し付けた。


「大体お前はチビのくせに上の方ばっかやってんじゃねぇ、上は男連中にやらせろ」

「はたき…あ、はい!お任せください!上の方は俺が全て掃除します!」

「ああ、しっかりやれ」

「はい!」


今しがた部屋に入ってきたばかりだけどエレンは自分に押し付けられたはたきに状況を理解したみたいで、リヴァイ兵長と私に機敏に敬礼すると踏み台に乗り本棚の上を掃除し始めた。
身長のあるエレンは私がやるよりも本棚の上の奥の方まではたきが届いて、確かに私がやるより綺麗になりそう。


「何が自分に向き不向きか、何が出来るか出来ねぇか…これからは考えて周りにも頼れ。他の連中を見てくる」


エレンが掃除する様子をぽかんと見ているとリヴァイ兵長が部屋から出て行こうとしたので慌ててその背中を呼び止める。
他に私に出来る事はないですかと聞くとリヴァイ兵長は少し考え、壁に立て掛けてあった箒を手に取り私に差し出した。


「ならお前はこいつで床をやれ、理由は言わなくても分かるな?」


床…そっか、床なら背の低い私にも出来る。
嬉しくてリヴァイ兵長から箒を受け取りビシッと敬礼すると、そんな私をじっと見る兵長の手がぽんと頭に優しく置かれて…時が止まった。



「そのやる気は悪くねぇ。まぁ床掃除なら問題ねぇだろうが…怪我しねぇ程度にしっかりやれ」



そう言うと、頭にお馴染みの三角巾を巻きながらリヴァイ兵長は部屋から出ていった。
部屋にはエレンがはたきでぱさぱさと埃を払う音しかしなくて、その音が止まるとエレンが踏み台から降り私の顔を覗き込んだ。


「あの、どうかしましたか?顔が真っ赤ですけど…」


敬礼したままずっと突っ立っている私を変に思ったのか不思議そうなエレンのその声でようやく止まっていた時が動きだし、急いで床掃除を始める。


顔の熱さを誤魔化すようにザカザカと床を箒で掃く私に、エレンはまだ不思議そうに首を傾げていた。









【お掃除の教え】
リヴァイ

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