進撃の巨人
□大人の空間
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「では行ってきます兵長、ナマエさん」
「ああ…」
「いってらっしゃい、遅くならない内に帰ってきてね」
まるで父と母の見送りのようだと、新リヴァイ班の面々は苦笑いした。
リヴァイはともかく、ナマエの笑顔は本当に我が子を見送る若き新妻のようで…街へ買い出しに行くだけなのに大袈裟ではとは思うが嬉しくもある。
「そうだ、これで帰りに皆の好きなものでも買って?皆いつも頑張ってるから」
「え!いいんですかナマエさん!?」
「ナマエさん天使ですか!?ありがとうございます!では帰りにパンを買ってきます〜!じゅる…っ!」
「ふふ」
ナマエが差し出した少しばかりのお小遣いに嬉しそうに飛び付いたコニーとサシャ。
そんな無邪気な二人の様子にナマエは優しく微笑んだ。
「おいナマエ…あまり甘やかすんじゃねぇ」
そんなナマエにリヴァイが小さく溜め息を漏らす。
“飴と鞭”という言葉があるが、ナマエが飴ならリヴァイは鞭だろう…こんな時それがより明確になる。
確かに皆もう立派な兵士だ、お小遣いというのは少々甘やかしに入るのかもしれない。
しかしリヴァイの言い分はごもっともだが日頃の皆の頑張りを見ているナマエとしては多少は甘やかしてあげたいのだ。
「あ!もう、だめですよ兵長」
「…………」
心を鬼にしてお小遣いを取り上げようとコニーとサシャへ伸ばした自分の腕に抱き付いてくるナマエに、リヴァイは鬼にした筈の心が揺らぐ。
その上淑やかに拗ねられてはリヴァイの鞭もお手上げだ。
「ほら、リヴァイ兵長に取り上げられちゃう前に行って?」
コニーとサシャと違い申し訳なさにお小遣いを貰うのを躊躇っているエレン、ミカサ、アルミン、ジャン、クリスタのポケットの中にお小遣いを入れたナマエは皆の背を押し微笑む。
外へ出た面々の視界に、閉まりゆくドアの向こうでリヴァイがナマエの頭を優しく撫でるのが見えた。
「たく…ガキじゃねぇんだ、小遣いなんてやってんな」
「でも、ご自分はいつもあの子達の事を“ガキ”と仰っていますよ?」
「チッ…それを言うんじゃねぇ」
「ふふ」
ドアが閉まる直前、リヴァイとナマエがどちらからとも無くそっと唇を重ね合わせたのが隙間からわかった。
大人の余裕さえ感じるその甘く自然なキスに、新リヴァイ班の面々は頬を赤くする。
あの様子からすると、二人にとっては朝晩寝て起きるのと同じぐらい当たり前なスキンシップなのだろう。
エレン「凄ぇ…なんかわかんねぇけど凄ぇ…余裕な兵長かっこいい…!!」
ミカサ「私も…いつかあんな関係を(エレンと)築きたい…」
アルミン「お、大人の空間って感じで素敵だったね…///」
クリスタ「う、うん…本当に素敵だった///」
ジャン「たく…見せつけてくれるぜ///」
サシャ「お二人ともお熱いですね〜♪」
コニー「へへっ、だな!」
いつまでもここにいるのは野暮というものだろう。
二人の邪魔をしないよう、新リヴァイ班は早々にその場を後にした。
(大人の空間)
2017.2.23