進撃の巨人

□ハロウィンが呼んだキャンディーの出会い
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*現パロです

大丈夫という方はスクロールをお願いします↓


















(あ、カボチャ可愛い)


ハロウィンが近い日曜、私は買い物の帰りに外でランチをしようとお気に入りのレストランに入った。
こんな時、一人ご飯が寂しいと思える性分なら友達でも誘ってランチを楽しんだのだろうけど、あいにく私は一人ご飯が平気な性分なのでこの通り一人でランチを楽しく過ごしたわけだ。

ヨーロッパ風の高級感溢れる店内でお腹を満たした後レジへ行くと、レジの横には小さめの可愛いお化けかぼちゃが飾ってありもうすぐハロウィンだなぁと微笑ましく思う。
お化けかぼちゃは可愛いけれど、高級感溢れる店内に相応しい値段が少しだけお財布にのし掛かる。
でも美味しいし、店員さんもいい人達ばかりだから、気が付くと足がこのお店に向いてしまう。
結局の所、やっぱりお気に入りのお店なのだ。


「ナマエ様、いつもありがとうございます。最近一段と寒くなってきましたね」

「そうですね、でも寒さには強いほうなんです」


にこりと微笑んでくれる店員さんに微笑み返す。
短く整えられたお髭のダンディな店員さんと少しお話していると、隣りのレジに三人のお客さんが並んだ。


「あの…本当によろしいんですかリヴァイさん?」

「ああ、ガキは黙って奢られてろ」

「あ、ありがとうございます!ご馳走になります」


そんな会話に何気無く横を見ると、白くて綺麗な手がクレジットカードを店員さんに渡しているのがチラリと見えた。
白シャツを肘辺りまで捲り上げている腕は細めなのに筋肉の筋が見えて男性らしい。


「こちらをどうぞ」


店員さんに差し出された小さな可愛らしいキャンディーに、横のレジを見ていた視線を前へ戻しお礼を言う。
聞くとハロウィン期間中は一人ひとつキャンディーが貰えるらしい。
素敵なサービス、子供達は大喜びだと思う。


「ありがとうございます、ではこちらをどうぞ」


隣りのレジでも店員さんのそんなにこやかな声が聞こえたのでまた横を何気無くみると、先程の白い綺麗な手が一瞬キャンディーを貰うのを躊躇ったように止まった後キャンディーを三つ受け取った。


「菓子か……ほらよ」

「あ…ありがとうございます!」

「礼なら店に言え」

「は、はい!;」

「あ、そうか、もうすぐハロウィンですもんね」


キャンディーを受け取った男性が後ろにいた男の子二人にキャンディーをひとつずつあげていた。
キャンディーを貰った男の子二人の戸惑いながらも嬉しそうな声がして何だか可愛い。

どんな人達なのか少し気になってしまって、私は控え目に見ていた視線を大胆に向けてしまった。
だって年上の男性が年下の子をぶっきらぼうながら可愛がってる感じが、あまりにも微笑ましかったから。


「ガキを黙らせとくには十分だな、これでもしゃぶって大人しくしてろ」

「そ、そんなに俺とアルミンうるさかったですか?;」

「ああ、特にてめぇがな、エレン」


黒髪の男性が活発そうな男の子の頭頂部を片手でがしりと掴んでジロリと見る。
そんな様子に、金髪の優しそうな男の子が苦笑いしていた。


(若く見えるけど…落ち着いてるし30代前半くらいかな?)


黒髪の男性…確かリヴァイさんって呼ばれていた。
綺麗な黒髪から覗く瞳は何処か憂いを帯びていて大人の男性の色気を感じさせる、横から見ればその睫毛が女の私より長くて驚いた。
綺麗な白い頬と形の良い唇は滅多に口角が上がらなそうな雰囲気だけど私はどちらかと言うと寡黙な男性が好きなのであまり気にならない。
それに一見無愛想で怖そうだけど、二人の男の子を大事に見守っているみたいだし。


(素敵な人だなぁ……)


ようするに私はときめいてしまっているのだ、今初めて会った見知らぬ男性に。
じっとリヴァイさんを見ていると、不意にリヴァイさんとバチリと目が合ってしまい心臓がこれでもかという程高鳴った。
それはときめきも勿論あるけど、こんなにじっと見ていて失礼な事をしてしまったという気持ちの方が強い。
いくら私が好意の目で見ていたとしても相手にはそんなの分からないのだから、不快にさせてしまったかもしれない。


「ご、ごめんなさいっ…あの…」

「………………」


リヴァイさんは慌てる私を少しじっと見た後、自分の手元にまだひとつ残っているキャンディーを見下ろした。
伏せた瞼の睫毛がやっぱり長くて驚く。


「…お前、甘いもんは好きか?」

「え…?」


じっと私を見るリヴァイさんの突然の質問に驚いたけど、不快にさせてしまったかもという不安は少し消えた。
私を見るリヴァイさんの目に、怒りの感情はなかったから。

その憂いを帯びた瞳にドキドキしながら、私は小さく頷いた。


「は、はい…好きです」

「そうか…なら丁度いい。こいつを貰ってくれねぇか」

「え」


スッと差し出されたキャンディーに戸惑っていると、リヴァイさんは後ろの男の子二人を顎で指した。


「俺は甘いもんが好きじゃねぇし、あいつらにやるにはひとつしかねぇからな。お前が貰ってくれんなら、助かる」


ああ、成る程。
そういう事なら確かに私が貰ってくれるとリヴァイさんは助かるかもしれない。
男の子二人の内一人だけにあげるのも不公平だし、貰った物をまたお店に返すのもなんとなく気が引けるし、私が甘い物が好きならそれでいいだろうし。

リヴァイさんは、周りをよく見て臨機応変に対応出来る人なんだ。


「そ、そうですか…そういう事でしたら……ありがとうございます///」

「ああ」


(やっぱり素敵……)


顔を赤くしながらおずおずと両手を出すと、リヴァイさんは私の手の上にそっとキャンディーを置いてくれた。
その際微かに触れたリヴァイさんの手は白くて綺麗なんだけど、やっぱり私の手とは違い大きく男性らしかった。


「…………///」

「?おい、あんま握ってると溶けるぞ」


顔を赤くしたままふたつのキャンディーを胸元で握り締めてリヴァイさんを見つめてると、当然だけどリヴァイさんは怪訝そうに微かに眉を顰めた。
そんな表情も素敵で、私は益々キャンディーを握り締める。


「ではリヴァイ様、来週の日曜もご予約を承っておりますので、当日お待ちしております」

「ああ、次はエルヴィンとミケを連れてくる」

「そうですか、かしこまりました。エルヴィン様とミケ様にも久しぶりにお会いできるのを楽しみにしています」


どうやら今の会話からリヴァイさんもこのお店の常連さんみたい、連れの人達も顔馴染みみたいでよくこのお店を利用してるのがわかる。
店員さんと慣れた様子で会話したリヴァイさんは男の子二人とお店を出る際こちらを振り返ると、まだキャンディーを握り締めてる私を見た。


「俺は一応いい大人にやったつもりだが…何だかガキに菓子をやったみてぇだな」


リヴァイさんはそう言ってほんの少しだけ口の端を上げると、上着を着てお店から出ていった。
開いたドアから秋風がお店の中に入ってきて私の火照った頬を優しく撫で、惚けていた私の意識をハッと呼び戻す。


「……っあ、あの…!」

「はい、なんでしょうか」


にこやかな店員さんに詰め寄りながら、私はスケジュール帳を開いて来週の日曜の予定を確認する。
来週の日曜を急いで探して見つけた、見事に真っ白。

いつもなら味気なく感じる真っ白な空欄が、今日はキラキラに輝いて見えた。


「……ら、来週の日曜…私も予約を入れたいんですが…いいですか?///」


店員さんは一瞬不思議そうにきょとんとした顔をしたけれど、顔を赤くしている私を見て色々察してくれたのか微笑ましそうに微笑んでくれた。


「勿論です、ではリヴァイ様がご予約のお席の隣のお席でよろしいですか?」

「…………は、はい///」

「かしこまりました、リヴァイ様は正午のご予約なので同じ時刻にご予約を承ります。頑張ってくださいね」

「…………はい///」


やっぱり私の気持ちを察してくれている店員さんの柔らかい笑みに、私もふたつのキャディーを胸元で握りながら微笑み返した。






(それはハロウィンが呼んだキャンディーの出会い)
2016.10.28

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