進撃の巨人

□血の積み木
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*ヒロインが狂ってる
*暗い

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積み木
これは私の積み木
私だけの積み木
大切な積み木
可愛い積み木
愛しい積み木
悲しい積み木
哀れな積み木
血の積み木








「積み木、積み木、私の積み木」

「……………」


蝋燭の灯りがゆらゆらゆらゆら。
椅子に座るリヴァイ兵長の膝の上に座りながら、私は机の上に積み木を積んでいく。
赤黒い積み木が途中まで積み上がった、蝋燭の火に照らされてなんて可愛いんだろう。
カツカツ音を立てながら積んでいくのも楽しい。
ああ…なんて愛しいんだろう。


「……ナマエ」

「ハイ」

「この積み木は…まだ未完成なのか?」

「そうデすよ、これは私の血で完成しマス」

「………………」

「死ヌ時の血ですよ、だからこの積み木は、私の代わりにリヴァイ兵長ガ完成させてクダサイ」


積み木の一番上の積み木をリヴァイ兵長に見せながら、私は微笑む。
この一番上の積み木はまだ赤黒くなっていなくて本来の木の色のままだ。
他の積み木と一緒にしないとこの積み木は完成しない。


「私の大切ナ積み木なので、リヴァイ兵長が大切に守ってクダサイ」

「………………」


私が笑いかけても、リヴァイ兵長は私を見つめたまま何だか悲しそうな顔。
蝋燭の火でとっても綺麗なのにその瞳には光がない。
何故そんな顔をするのかワカラナイ。

積み木の一番下の赤黒い積み木を指差して、「見テ」とリヴァイ兵長のその腕を少し引くとリヴァイ兵長はゆっくりと私から積み木に視線を移した。
それが嬉しくて、私はリヴァイ兵長の膝の上ではしゃいだ。


「コれがエルド、これがグンタ、これがオルオ、こレがペトラ」

「………………」


リヴァイ兵長と積み木を交互に見ながら指差していくと、リヴァイ兵長の両腕がそっと私のお腹に回された。


「これがエルヴィン団チョウ、これがハンジさん、モブリットさン、エレン、ミカサ、アルミン他にもたくさン」

「………………」

「皆ノ血がこの積み木ヲ彩っていマス。この積み木は、皆なんデす」

「………………」


皆を積んで積んでひとつにした。
これで寂しくないでしょ?

私も死んだら皆とひとつになれるんだ。
これで寂しくないでしょ?

積み木を積み直してるとお腹に回されたリヴァイ兵長の両腕に少し力が入った、ちょっと苦しくてうんうん言いながら体を捻ってるとうなじにリヴァイ兵長の唇の感触がした。


「…ナマエ」

「ハイ」

「…俺は、この中には入れてくれねぇのか?」

「リヴァイ兵チョウはだめです」

「………………」

「兵長ハ、この積み木ヲずッと守ってください」

「……この世で、たった一人になってもか?」

「ハイ」

「………………」


リヴァイ兵長の綺麗な瞳が、悲しそうに歪む。
まだうんうん言いながら体を捻ってるとバランスを崩してリヴァイ兵長の膝の上から落ちそうになったけど、兵長がすぐ支えてくれた。


「危ねぇだろ…気を付けろ」

「ごめンなサイ」

「………………」


嬉しくてリヴァイ兵長に微笑むと、兵長は光のない瞳に私を映して私をぎゅっと抱き締めた。
リヴァイ兵長のいい匂いがする。


「…一人じゃ…もう…こんなやり取りも出来なくなるじゃねぇか」

「それでもデス」

「………何故だ…」

「ないショです」

「………………」


本当は、リヴァイ兵長には死んでほしくないから。
この世でたった一人になっても、リヴァイ兵長には生きていてほしい。
でもこれはまだ教えてあげない、ナイショ話しはとっておいた方が楽しいもん。
リヴァイ兵長は私をそっと離すとやっぱり光のない瞳に私を映して私の頭を優しく撫でてくれる。


「………そうか……内緒か…」

「ハイ」

「……ナマエ…俺も積み木に…触ってもいいか?」

「ン〜…リヴァイ兵チョウならいいデスよ」

「……そうか」


私以外がこの積み木に触るなんて嫌だけど、リヴァイ兵長は特別。
リヴァイ兵長の綺麗な手が、積み木を静かにひとつひとつカチャ…カチャ…と積んでいく。
私が積むのとはまた違う、なんて綺麗なんだろう。
繊細なのに何処か悲しそうで、バランス良く積んでるのに少し突つくだけで瞬く間に崩れてしまいそうな危うさもある…本当に綺麗。
私はリヴァイ兵長の膝の上でまたはしゃいだ。


「キレイ!リヴァイへいチョウ、私にモこの積み方教えてクダサイ」

「………………」

「積み木が完成したラ、私もこんな風に積んデもらエルんですね」

「…………っ」


積み木を綺麗に積んでいたリヴァイ兵長が急に私を強く抱き締めるから、積み木がバラバラに崩れてしまった。
ガチャガチャと音を立てて崩れる積み木が何故か物凄くゆっくりに見えて、私は目を丸くする。

崩れた時に弾みで机から転がり落ちた積み木が部屋の隅に転がっていき…私は一瞬放心状態になったけどバラバラに崩れた積み木と床に転がった積み木を見て、ヒステリックに泣き叫んだ。
私の超音波みたいな泣き声が部屋に響いて、リヴァイ兵長の腕の中から積み木に手を伸ばすけど届かない。


「……っガスがなくても…刃がなくても…俺がお前を守ってやる…だから…そんな事言うんじゃねぇ…!」


リヴァイ兵長の悲痛に満ちた声が耳元で聞こえたけど何を言ってるのかよく分からなかった。



窓の下に転がった積み木に泣き叫びながら手を伸ばしていると、窓の外から数体の巨人がこちらを覗き込んでいた。







(籠城の中の積み木遊びと兵士長と狂ってしまったその恋人)
2016.5.22

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