進撃の巨人
□ピンク色の信号弾
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キィィーーーン…!!
「…っう…!」
すると突然激しい耳鳴りがして思わず両耳を手で覆った、これはもしかして…音響弾?
奇行種も音響弾に錯乱したみたいで私を手放し、私の体は重力によって下へ落下する。
(落ちる…!)
反射的に目を閉じてしまったけど、馬が駆けてくる蹄の音と共に私の体は地面に落ちる前に誰かに受け止められた。
「ナマエ!大丈夫!?」
「え…ア、アルミン!」
聞き慣れた声にそっと目を開け上を向くと、心配そうにこちらを見下ろすアルミンがいた。
私は乗馬しているアルミンにお姫様抱っこされている状態で、落下する私をアルミンが受け止めてくれたんだと分かった。
私を馬に座らせるとそのままアルミンは馬を操り動きが止まった奇行種の背後へ回った。
「馬を頼む!」
「あ、うん!」
そう言うとアルミンは剣を抜き、ワイヤーを奇行種の体に打つと立体起動で奇行種のうなじを削ぎ落とした。
奇行種が大地に倒れ込む大きな音と共に着地したアルミンが振り返って、私に安心したように優しく笑いかけてくれる。
(す、凄いアルミン…かっこいい……)
素直にそう思い、頬が熱くなった。
剣をしまい駆け寄ってくるアルミンに馬の上から手を差し伸べると「ありがとう」とアルミンが私の手を掴み、ひょいと私の後ろへ乗馬する。
「間に合ってよかった…ナマエ、怪我はない?」
「えと、足が痛いけどなんとか大丈夫…あの、アルミン…助けてくれて…本当にありがとう」
「ううん、お礼なんていいよ…ナマエが無事でよかった」
「ア、アルミン……」
心底ホッとしたように微笑むアルミンの顔は凄く大人っぽくて…いつものアルミンじゃないみたいでドキドキしてしまう。
「よし行こう、陣形に戻らないと。しっかり掴まって?」
「うん」
アルミンが手綱を握り馬を走らせる。
手綱を握るアルミンの両腕の間にいる状態の私は横向きに座ってるから、アルミンの体に抱き付いて落馬しないようにする。
アルミンの胸に耳を押し付けると、ドクンドクンと心臓の音が聞こえた。
(アルミンの心臓の音…少し、早い…?)
思わずアルミンを見上げると、真っ直ぐ前を向いて馬を走らせているアルミンの頬が少し赤くなっていて、何故か私まで赤くなってしまった。
「えと…ナマエ、足は痛む?」
「う、うん…ちょっと…」
照れたように視線を泳がせたアルミンと目が合う。
少し片足を動かしてみるとズキンと痛みが走り眉を寄せてしまった、何処か変な風に捻ってしまったのかも。
私の表情を見たアルミンが眉を下げた。
「そうだよね…ごめん、拠点に着くまでもう少し我慢してくれ。拠点に着いたらすぐ手当てをしてもらおう」
「うん、私は大丈夫だから…そんな顔しないで?アルミン」
「ナマエ……」
元はと言えば私の未熟さが招いた怪我なのに、まるで自分のせいみたいに悲しそうな顔をするアルミンの頬を撫でる。
アルミンのせいな訳がない、寧ろ助けに来てくれて本当に感謝してる、感謝してもし足りないくらいなのに…だからそんな顔しないで。
私が微笑むとアルミンもやっと笑ってくれて、ぽわんと心が暖かくなるような感覚がして…やっぱり私は笑顔のアルミンが好きだなと思った。
(ん?………すき?)
「?」
「ナマエどうしたの?もう少しで拠点だからこのまま行こう」
「う、うん」
今、一瞬何かに気付いたような感覚がしたんだけど…何だろう…また分からなくなってしまった。
とても心が暖かくなるような感覚だったのに…もう一度感じたいな。
(…アルミンと一緒にいれば、また感じられるかな?)
そう思い、私はまたアルミンにぎゅっと抱き付いた。
2016.4.8