進撃の巨人
□許し難いコトバ
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*1ページ目が修羅場、あまりいい気分にならない
*リヴァイが問題発言
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「ナマエ」
訓練を終え一息ついているとリヴァイ兵長に呼ばれる。
本当に今終えたばかりで汗も拭いていない、せめて汗くらい拭きたい私は少し待ってくださいとリヴァイ兵長に言おうとしたのに、問答無用で腕を引かれリヴァイ兵長の部屋に引き込まれた。
エレンやミカサやアルミンや他のリヴァイ班の皆は気を使って見て見ぬ振りをしてくれたけど、気まずそうな皆の顔からしてきっと私とリヴァイ兵長が今からいかがわしい事でもするんだと思ってるんだろう。
いや、私もちょっと今からそういう事されるのかなって予感はしてるけど…それは兵長が勝手にしてくるだけであって私の意思ではない。
だからそんな恥ずかしそうに顔を逸らされるとこっちまで恥ずかしくなるからやめて、特にアルミンとクリスタ。
バタンと扉が閉められて、リヴァイ兵長に抱き締められる。
リヴァイ兵長のいつも急な求愛には驚かされてしまう。
上を向かされ触れるだけの口付けをされた後舌が入ってくる。
舌が絡まりくちゅくちゅ官能的な音が部屋に広がり、リヴァイ兵長の興奮を高めていっているのが分かった。
唇を離したリヴァイ兵長はすっかり欲情した男の顔になっていて、私を見つめるその瞳は欲情に細められ色っぽい。
少し息を乱しながらリヴァイ兵長が私の首元に顔を埋めた時だった、兵長の動きがそこでピタリと止まった。
「………おい、ナマエ。シャワーは浴びたのか?」
「浴びてませんよ…」
だって、リヴァイ兵長が有無を言わさず部屋に引き込んだんじゃないですか。
そう言おうと私の首元から顔を上げたリヴァイ兵長を見上げた時、私は自分の目を疑った。
だってそこには、本当に嫌そうに眉間に皺を寄せて私を見下ろす兵長がいたのだから。
まるで不潔な物を見るような…そんな冷たい目。
お世辞にも恋人に向けるような目とはとても言えない。
初めて見るリヴァイ兵長のその目に、私は心臓が一気に冷たくなった。
まるで、一瞬で自分の心臓が凍りついたみたいだ。
「チッ……汚ぇな……早くシャワー浴びてこい」
その瞬間、私の両腕は自分でも信じられない程の力でリヴァイ兵長の身体を突き飛ばしていた。
いつもはビクともしないリヴァイ兵長の身体が吹っ飛んで、床に尻餅をつく。
リヴァイ兵長は驚いたように目を丸くして私を見上げた。
そんな兵長を、私は多分今まで生きてきた中で一番冷たい目で見ているんだと思う。
だって、汚ぇって何だ。
少しでも強くなって、人類復興の為に頑張ろうと訓練した結果の汗を、汚ぇって何だ。
失礼だろ。
それに汗を拭く間もなく求めてきたのはそっちだろ、こっちの都合も無視して盛ってたのはそっちだろ。
そのせいで汗まみれなままなのに、それを汚ぇって何だ。
自分勝手過ぎるだろ。
私はそのまま兵長を放置して部屋を出た。
出るなり皆がこっちを見てきたけど、私のあまりの剣幕に誰一人声をかける事も出来ないような顔をしていた。
目を丸くしている皆を無視して浴室に入り、ドアが壊れる勢いで閉める。
その音に外で誰かが「ひっ…!」て小さく悲鳴を上げていた、多分コニーだけどそんなのどうでもいい。
真っ赤になる程身体を擦り、髪の毛がブチブチ抜けるくらい頭を洗った。
兵長があの嫌な顔をした首元はまるで引っ掻くみたいに洗いまくったら血が出た。
血と一緒に涙も洗い流して身体を拭く、傷が出来た所が拭く度にズキズキと痛んだ。
タオルで頭を拭きながら浴室から出るとまた皆がこっちを見てきた、特にコニーやクリスタやサシャが私の様子に怯えたようにビクビクしている。
けど私は黙ってイスに座っているエレンの横に座った。
何でエレンの横なのか?ただ単にエレンの横が空いてたからってだけ。
暫く目の前の机の一点のみを見つめながら頭を拭いていたけど、その間も周りの皆は微動だにせず静まり返っている。
浴室で血と涙を散々流したからか幾分か落ち着いた思考回路で、今のこの状況は私が作り出したものなんだと気付いた。
ならば、私が何か行動しない限りこの状況は動かない。
そう思い、一度深呼吸してから、私は横のエレンに話しかけた。
「そういえばエレン、さっきの話しってどうなったの?」
「は!?さ、さっきの話しってなんだよ…」
「ほら、昔ミカサとアルミンと一緒に行った何とかかんとか〜って言ってたじゃない」
「あ…ああ!そうそう!その話しな!」
エレンは急に私に話しかけられて驚いていたみたいだったけど、私がどうしてあんなにキレていたのか聞いてはこなかった。
聞いてはいけない雰囲気が私から滲み出ているのか、他の皆も必死にいつも通りに接しようとしてくれているみたいで、気を使わせてしまって申し訳なくなった。
後できちんと、皆に謝らないと。
「……ナマエ」
突然首元に手の感触がしたと思ったら、ミカサが眉を下げながら私がさっき浴室で作ってしまった首元の傷を優しく撫でてくれていた。
ミカサは鋭いから、色々察してくれているのかもしれない。
「………………」
すると今度は片腕がそっと持ち上げられて、アルミンが今にも泣きそうな顔をしながら浴室で擦りすぎて真っ赤になった私の腕を優しく摩ってくれる。
アルミンがそんな顔する事ないのに…。
サシャやコニーが主に盛り上げてくれて皆でワイワイ話していると、リヴァイ兵長の部屋の扉がゆっくり開き部屋の主が出て来た。
その途端皆の声がピタリと止み、また部屋は静寂に包まれる。
エレンが顔を真っ青にして私の後ろをチラチラ見るけれど、私は一切後ろを見る事無くエレンの顔ばかり見つめいた。
リヴァイ兵長が、ゆっくり近付いて来る足音がする。
それでも後ろは見ない。
見る必要性を感じないからだ。
「………ナマエ、悪かった」
リヴァイ兵長の足音がすぐ後ろで止まり、いつもの兵長らしくない声色が聞こえた。
罪悪感を感じているような、声。
でも私はそんな兵長の声を鼻で笑った。
どの口がそんな事を言うのか。
あなたは私の心を傷付けたばかりか兵士としての尊厳も傷付けた。
最低の人だ。
顔も見たくない。
「どうぞご勝手に一人で抜いてください、明日も明後日も明々後日も一人で抜いてください。ずっと一人で抜いてください。もう金輪際私に触れないでください」
「…………………」
淡々とした口調が、自分で聞いていても恐ろしく聞こえた。
自分のこんな恐ろしい声は初めて聞いた。
リヴァイ兵長が今どんな顔をしているのかは分からない、兵長の顔を見てないから当然だけど。
リヴァイ兵長は暫くその場に立ち尽くしていたけど、少しするとゆっくり足音が遠ざかっていき、兵長の部屋の扉がパタンと静かに閉められたのが…分かった。
「…………っ」
リヴァイ兵長がいなくなると、さっき血と一緒に洗い流したはずの涙がまた溢れてきた。
ずっとエレンを見ながら話していたから、私が泣き出した事に誰よりも早く気付いたエレンが目を丸くする。
嗚咽を必死に我慢すると、唇が震えてしまう。
「だって…汚ぇって何だ…少しでも強くなって…人類復興の為に頑張ろうと訓練した結果の汗を汚ぇって何だ…失礼だろ…それに汗を拭く間もなく求めてきたのはそっちだろ…こっちの都合も無視して盛ってたのはそっちだろ…そのせいで汗まみれなままなのに…それを汚ぇって何だ…自分勝手過ぎるだろ…っ!」
「………ナマエ」
さっきリヴァイ兵長に心の中でついた悪態を、何の関係もないエレンにぶちまける。
涙でぐしゃぐしゃになった私の顔を自分の胸に押し付けて、エレンは優しく抱き締めてくれた。
リヴァイ兵長に直接言えばいいのに、言えないのはどうしてだろう
それはきっと、怒りの感情と同じぐらい…悲しみが強かったからだと思う
リヴァイ兵長
私はそのくらい
あなたに言われた事が
悲しかったんです