HelloWould!!!!

□第7.5話 ご褒美?
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千鶴は左之さんと巡察に行ってしまった。それに比べてあたしは鬼の副長様と池田屋事件の報告書作りに絶賛取り掛かり中。なんで土方さんと肩並べて書類作成なんてしなきゃいけないんだ。千鶴、千鶴が足りない‼千鶴を補給したい。

「千鶴に会いたいよ〜。」

「ごたごた言ってねーで仕事しろ。」

「こんだけ長い時間部屋に閉じこもってたらごたごた言いたくなりますよー。それに仕事効率悪くなるだけですよ。」

「………………………。」

「(はいきた、言い返せないときの必殺技、無視。)」

最近わかったのだが土方さんは今みたいに自分が不利になると無視する。はっはっは‼口喧嘩であたしに勝てると思うな‼と内心勝ち誇っている。

「池田屋の時、総司の事助かった。ありがとな。」

「あ、いえ。大した事ないです。それよりあたしが駆けつける前に総司と戦っていた金髪の男何者なんでしょうね?」

「まだこっちも詳しい情報は得られていない。まさか総司と平助があそこまでやられるとはな。どうやら長州のものではないらしいが。」

「そうなんですか。あのその男達の事で感じた事があるんですけど…」

「なんだ?」

「気配が普通の人と違うんですよ。」

「気配が違うだ?」

「はい。普通の人間ではない気配がしたんです。なんて言えばいいんだろうな〜、う〜ん、取り敢えず人間ではない何かです‼」

「人間じゃないだと⁉妖怪だとか言いたいのか⁉お前やっぱり阿保だな。」

「いや阿保って言われても、本当のことなんですから‼まあ無理に信じろとも言いませんけど。現にここに人間じゃないのがいる訳ですし。」

「お前は特例だ。」

「はぁ。まあ今回の事件で相手方に相当の手練れがいる事がわかっただけよしととましょうよ。」

「そうだな。仕事もキリがいいし出かけるぞ。準備しろ」

「え‼出かける⁉外に‼」

「池田屋の褒美だ。行かねーのか?早くしろ。」

「行く‼行きます行きます‼」

部屋を出ていってすでに廊下を歩いている土方さんの背中を追いかける。追いついて土方さんが首だけこちらを向いた時あまりにも綺麗な顔に見惚れてしまった。

「どうした?俺の顔になんかついてるか?」

「い、いえ何も。」

あなたの顔に見惚れてました、なんて絶対言えない。会話も特にないまま屯所をでてただひたすら土方さんの背中を追いかける。すると和の国でも聞いた事のある懐かしい祭囃子が聞こえてきた。聞こえた音に誘われるように目を向けるとそこにはキラキラ光っている神輿とそれに連なるように人が並んでいた。

「綺麗…」

「祇園への山鉾だ。見れるのももう今年で最後かもしれない。」

「え…」

「このまま幕府が存在し続けるとは言えねぇ。今みたいにみんなで何時までも一緒にいれるわけでもねぇ。どんなに栄華を築いても永遠などありえねぇ。」

土方さんの横顔は今にも消えてしまいそうな儚い顔をしていて、胸が苦しくなった。この苦しさはなんなのかわからないけど土方さんをこんな顔にさせる時代の流れが腹立たしくなった。

「そうですね。永遠に存在し続けるものなんてどこの世界にもありません。でも、みんなが変わるから時が流れるから、今の一瞬が大切な物になるんじゃないですか?失うのが怖いと嘆く暇があったら今を桜花したほうがいいです。」

いってしまった。真剣に悩んでいる相手にこんな救いようもない言葉をかけてしまった。穴があったら今すぐ隠れたい。あー土方さん余計落ち込んだよなー。なんて声かければいいんだろ。顔あげらんない、土方さんの顔見れない。

ポサ

赤いであろう顔を隠すために俯いていた頭に落ちてきたのは土方さんの大きな手。一瞬何が起きたのか理解するのに時間がかかった。土方さん手はそのままあたしの頭をわしゃわしゃと掻き回してきた。

「いでででででで。なんですか⁉いきなり⁉」

押さえつけられるように頭を撫でられた?ので思わず手を払いのけ土方さんを見る。

「ふっ。そうだな。」

そこにはいつも眉間に皺を寄せている鬼の副長とは思えないほどの綺麗な笑顔。新選組の土方歳三じゃなくてただの土方歳三がそこには立っていた。

「(な、な、なんだったんだ⁉)」

「ほら、もう帰るぞ。」

数分間ぼーっと突っ立っていた状態からようやく我に返って、先に歩き始めた土方さんの背中を追いかける。顔を覗くと何やら嬉しそうな顔をしていてあんな拙い言葉だったけどこの人の力になれたのかなと自分のいいように解釈した。永遠なんて存在しないけどこの時間が続けばいいなと心の中で願うことは許されるだろうか。
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