HelloWould!!!!
□第6.5話 みんなで食べよう
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目が覚めて寝癖をピョイピョイと跳ねたままの神流は頭をぽりぽりかきながらだるそうに起き上がると台所に向かい廊下を歩いていた。台所に着くと総司と斎藤と千鶴が朝ごはんの準備をしていた。
「おはようー」
「あ、神流ちゃんおはよう。」
「神流姉さん。おはようございます。」
「みんな朝から元気だねー。それにしても3人がいつもご飯作ってるの?」
ふぁーと欠伸をしながら言う。
「別に俺たちだけではない。食事の支度は持ち回りだ。」
「へぇ〜。」
「よっ‼神流‼」
「平助‼おはよう‼」
「山南さん今朝も自分の部屋で食べるってさ…。」
「食べるったって毎日ほとんど箸をつけてないけどね。」
「ふーん…」
「食べるもの食べなきゃ傷だって良くならないよな。」
「あの…」
千鶴が何かいいかけたとき後ろから現れた後ろからかけられた声に遮られる。
「広場を自由に出入りしていいとは言ったが勝手場までとは言ってないぞ」
「おはよーございまーす。そんな硬いこと言わないで下さいよ。別に毒なんて入れませんって。」
嫌味ったらしくいうと何も言わず背を向け立ち去ろうとした。そのとき千鶴は何を思ったのか土方に声をかけていた。
「あの、山南さんの食事、私にお世話させてもらえないでしょうか?」
「お前が?」
「はい。父の側で怪我人の看病もしていましたし。」
「やめておけ。下手な気遣いはかえって意固地にさせるぞ。」
「いいじゃないですか。誰が持っていってもろくに食べてくれないんだし。この際この子に頼んでみたって。」
「そーだよ‼このままじゃ山南さん打っ倒れちまうって‼」
「わかったわかった。勝手にしろ。そうだ、星川飯食べる前に俺の部屋に来い。」
「うぇ?あ、はい。」
土方はそう言い残すと自分の部屋に戻ってしまった。
「土方さん。山南さんが心配じゃないんでしょうか。」
「逆だ。」
「へっ?」
「むしろ1番心配している。自分が一緒にいながら山南さんに怪我を負わせてしまったことを誰よりも気にかけている。」
不安そうな顔をしている千鶴の頭を撫でる。
「神流姉さん?」
「そんな不安そうな顔しないで。そんな気持ちで作ってたらご飯も美味しくなくなっちゃうよ。」
「はい‼」
「そうそう。千鶴はそうやって笑顔じゃないと。あ、そうだ土方さんに呼ばれてたんだじゃあたしそろそろいくね。」
後ろを振り返らずそのまま土方さんの部屋に向かった。いきなり部屋に呼ばれるとは思ってなかった。何か問題でも起こしてしまっただろうか?何かあったら容赦なく斬ると言っていた。本人の雰囲気からあれは本当のことだろう。私は斬られてもなんの問題もないが千鶴は別だ。普通の人間だから斬られたら血を流して死んでしまう。それだけは絶対に避けたい。この世界にきてまだ日は浅いけどあの子は私の大切な家族だ。何があっても守る。
「土方さん。星川です。」
「はいれ。」
「失礼しまーす。」
部屋の襖を開けるとそこには机で書類の仕事をしている土方さんの姿があった。あたしが部屋に入りあらかじめ用意されていた座布団に座ると土方は立ち上がり襖から刀を3本取り出すとあたしに向かい合って胡座をかいて座る。
「お前に刀を返してなかったからな。侍たるもの腰に下げてないとな。」
「うぉぉぉぉぉ‼雪柱に炎柱に黒龍‼帰ってきたー‼」
あたしはようやく戻ってきた愛刀に頬ずりをする。
「そんなに刀が好きなのか?」
「え?あ、はい。あたしの命の次に大事ですね。はぁーよかったー。あ?でも用心深い土方さんが刀3本も返してくれるとは思えないし…。これ夢か?」
「おい…。」
土方さんは物凄い睨みを利かしてあたしの頬をつねった。
「あー。はい。夢じゃないです。夢じゃない。」
棒読みで言うといつもの盛大なため息を吐く。そして立ち上がりまた机に向かい仕事を始めた。
「話はそれだけだ。刀…大事にしろよ。」
「ほーい。あ、そろそろ朝飯なんで広間に行った方がいいですよ。」
「わかった。」
そっけない答えが返ってきたのを確認してあたしは広間に向かうため部屋を出た。