HelloWould!!!!
□第5話 夕飯と訃報
2ページ/2ページ
総司が障子を開けるといきなり抗議の声が上がった。
「遅ぇよ‼」
「おめぇらこの俺の腹の高鳴りどうしてくれんだ?」
「どうもすみませんでしたね‼遅くて‼」
永倉さんに対して嫌味をいうと。
「げっ‼なんでそいつがいるんだ?」
「神流姉さん⁉」
さっきまでの威勢はどうした⁉
「なんだよいちゃ悪い?」
「い、いやそんなことねぇが…まぁ飯はみんなで食った方がうまいしな‼あははは‼」
「おいおい飯食う前に喧嘩おっ始めんなよ‼怒ってねーでこっちに座れ‼」
「はいはい。」
そういうと原田さんは横に避けて神流の座る場所をつくる。藤堂君が持ってくれた神流のご飯を空いた場所に置いてくれる。
「はいよ。」
「ありがとう。藤堂君。」
「あ。その藤堂君ってやめない?総司だって名前で呼んでるんでしょ?みんな平助って呼ぶからそれでいいよおれも神流って呼ぶから。」
「え‼本当に⁉じゃあよろしくね平助‼」
「ああ、よろしくな神流」
微笑ましい光景にその場にいたものはみな微笑む。
「いただきます。」
私が手を合わせていうとみなきょとんとする。
「え?なに?そんなに珍しい事した?」
「いや、神流って異世界から来たんだろ?俺たちと同じように食べる前にいただきますなんていうんだなと思って。」
「そりゃあ言うよ。それに異世界から来たとはいえ、あたしの出身の島はこの日本の文化や政治、生活様式も何から何までそっくりだからねー。」
「そうなのか⁉だから着付けもできたし刀も腰にぶら下げてたのか。」
「そうそう。こっちの世界に飛ばされたときは突然の事で驚いたけど文化が同じで助かったわ。さぁさぁ早くご飯食べよ‼」
せっかく暖かいご飯なのにこれでは冷めてしまう。
「相変わらずせこい晩飯だな。という訳で…」
「あっ‼ちょっとしんぱっつぁん‼なんで俺のおかずばっかねらうのかな⁉」
永倉さんが平助のおかずを奪う。正直行儀が悪い。
「はっはっはっは‼それは体の大きさだ‼大きいやつはそれなりに食う量が必要なんだよ‼」
「じゃあ育ち盛りの俺はもっと食わないとねっ‼」
「甘い‼」
平助が永倉さんのおかずを仕返しに奪おうとするが平助の箸が届く前に永倉さんのおかずは本人の口の中へと丸ごと放り込まれていた。
「丸かじりかよ。」
「いるか?」
残りカスを平助に渡そうとする永倉さん。どうでもいいどんぐりの背比べが始まる。ふと千鶴に目を向けるとクスクスと2人のやりとりを見て笑っていた。まぁ賑やかのはいいのだが。
「毎回毎回こんなだ。騒がしくてすまないな。」
「いえいえ。みんなでワイワイ騒いでる食べた方が美味しいし。懐かしいです。向こうの世界で放浪の旅をしてた時出会った友達を思い出します。」
神流は原田に微笑む。しかし神流の笑顔はどこか寂しそうだった。その綺麗な笑顔に原田は思考が停止してしまう。
「原田さん?あたしの顔になんか付いてる?」
「あ?いや違うんだが…。お前はもっと笑ったてた方がいいぞ。それにその原田さんなんて他人行儀はやめてくれ左之助でいい。」
「はあ。じゃあ改めてよろしく左之さん‼」
「おうよろしくな神流‼」
こうやってご飯を一緒に食べたらなんとなく誤解してたような気がして申し訳なくなった。話してみればみんな人柄のいい人ばかりだった。
「ちょっといいかい?みんな‼大阪にいる土方さんから知らせが届いたんだが山南さんが隊務中に重傷を負ったらしい。」
楽しい空気が井上さんが持ってきた知らせで崩れる。
「それで‼山南さんは⁉」
「相当の深傷だと文に書いてあるけど…傷は左腕だと事だ。剣を握るのは難しいが命に別条はないらしい。」
「良かった。」
千鶴が言う。
「よくねーよ‼」
「刀は片腕で容易に扱える物ではない。最悪山南さんは2度と真剣を握れまい。」
「えっ‼」
「それじゃあ。私は近藤さんと話があるから。」
井上さんは連絡し終えるとすぐに障子を閉め近藤さんのところに行ってしまった。
「いざとなれば薬でもなんでも使って貰うしかないですね。」
「滅多な事を言うもんじゃねえ幹部が新撰組入りしてどうすんだよ…」
「え?山南さんは新選組の総長じゃないんですか?」
「えっ。いや…」
「違う違う"新選組"ってのは"新しく選ぶ組"ってかくだろ?俺たちが"新撰組"って言ってるのは選の字を手偏に…」
「平助‼」
その時だった隣にいた原田が平助に殴りかかろうとしたのは、千鶴の甲高い声悲鳴。しかし原田の拳はしかし原田の拳は神流に手首を掴まれた事でわらわらと震えながら平助の顔面に当たる寸前のところで静止していた。
「やめろ。」
神流は覇気で原田を威嚇する。覇気の気迫で正気に戻った原田は肩で荒い息をしている。
「す、すまねぇ。」
「やり過ぎだぞ左之。平助も千鶴ちゃんと神流の事を考えてやってくれ。」
「いや、今のは俺も悪かったけどったく左之さんはすぐ手が出るんだからな。」
「千鶴ちゃんと神流。今の話はお前らに聴かせられるギリギリのところだ。気になるだろうが今は聞かないでほしい。それと神流、左之を止めてくれてありがとよ。もう大丈夫だ」
永倉のその言葉に反応し神流は原田の手首から手を離す。
「っでも。」
千鶴はまだ納得がいかないらしい。
「平助の言う"新撰組"って言うのは可哀想な子たちの事だよ。」
沖田の重々しい言葉が辺りに響いく。重苦しい雰囲気でその日の晩飯は終わったのだった。