HelloWould!!!!
□第2話 その場凌ぎが何とやら
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「っ‼」
目が覚め最初に感じたのは強烈なだるさ。その原因は言うまでもなく体にこれでもかというほど巻き付けられた海楼石で。道場らしきところの柱にぐるぐる巻きにされていた。
「目が覚めようだな。」
聞こえてきた方を見上げるとこの世界に来たとき会った紫色の目をした恐ろしく顔の整った男だった。
「……………。」
怠くて話を返す気にもならない。
「ちっ‼無視してんじゃねーよ。」
少し離れたところにいた男は無視したあたしの近くまでくる。
「この鎖のせいで体がだる過ぎて喋る気にならないんですー。取ってください。」
「阿保か‼とるわけねーだろ‼」
「うー。てかなんであたしはこんな目にあってるんですか?あんたに何か危害を加えましたか?加えてないですよね?ってことでこれ外してくださいてか外せ。」
「普通に喋れんじゃねーか‼だから外さねーよ‼」
「けち‼」
「ったく。何とでもいいやがれ。それよりこっちは聞きたいことが山ほどあんだ。」
「こっちは聞かれることなにもないです。早くこの鎖外してください。一生のお願い。」
「なんで見知らぬ野郎に一生のお願いされなきゃならねーんだ。あー全く話が進まねぇー‼」
「うっさいなー。耳元で怒鳴らないでくださいよ。鼓膜破れます。」
「お前が大声出させてんだよ‼」
こんなやりとりを永遠としていると入り口からぞろぞろと紫色の瞳のお兄さんの仲間と思えるもの達が入ってきた。
「あっ。土方さんこの子目が覚めたんですね。殺しちゃっていいですか?」
「意識戻ったのに殺すって…。それはねーだろ総司。」
「へーこいつが変な奇術使うやつか。なんか普通だな。」
「平助、油断するな。こいつが奇術を使ったときただならぬ殺気を感じた。」
「こんな細っこいのに逃げられたのか?新撰組も落ちぶれたもんだぜ。」
個性豊かな仲間が口を開く。また面倒くさそうなのが集まっちまった。最初の奴に関しては既に殺すとか言ってたし。土方とか言われてる紫色の目をした男をうまく言いくるめて逃げ用としたのに。
「ちょうどいいところに来たお前ら。今からこいつの事を聞き出そうとしたんだが上手くはぐらかされちまってな。」
「へぇ〜珍しいですね。土方さんでも手こずるなんて。なんか興味湧いてきた。ねぇ君名前なんていうの?」
7対1、海楼石で縛られてる状況では逃げ出すこともままならない。さすがにこのままはぐらかしているといい加減本当に殺されそうなので観念して喋んことにした。
「星川神流」
「へぇー。神流ちゃんか。」
「どこ出身なの?」
「貴方達にはわからない遠い国です。」
ふーん。笑顔で質問してくるけどそれと同時にただならぬ殺気を向けられる。
「単刀直入に聞く。お前が使った奇術はなんだ?なんで腹を刀で刺されてなんともねー上に水が出てきた。俺のまえから姿を消したのもその奇術か何かか?」
「あー。うー。それを聞くなら交換条件です。この鎖を取ってくれたら話します。」
「そいつわ無理だ。そしたらてめぇ逃げるだろうが。」
「逃げません。男に二言はない。女だけど。」
土方は盛大に溜息を吐くと仕方ねーといい。
「お前ら。鎖を解いてやれ。」
「え⁉いいんですか?」
「本当に取るのか?土方さんどうしたんだよ⁉らしくねーな‼」
「仕方ねーだろ。こっちだってこいつの奇術の種をしりてーんだ。」
よし‼心の中でガッツポーズ。逃げ出そうとは思ってないがひとまず海楼石から解放されるだけましだ。ジャラジャラと鉄の音を立てて外されていく海楼石。もう当分お世話になりたくない。
「あー。スッキリした‼で。なにから話せばいいんだっけ?」
「お前の力についてだ。」
「あー。それを話す前に重大発表‼私は多分この世界の人間ではありません。信じるか信じないかはあんた達の勝手ですが。別の時空。パラレルワールドから来た人間でーす。」
「「「「はぁ〜〜⁉」」」」
「信じろと言われてはいそうですか。とは言いにくい話しだろうけど。でも最初に会った3人は見たはずよ。着物じゃなくてあんた達から見て奇妙な服着てたでしょ。アレが1つの証拠。」
「そうなのか?土方さん?」
「あぁ。南蛮人みたいなかっこしてたぞ。」
「あとはあんた達が知りたがってるこの能力。」
あたしはないもないはずの手のひらから水をぼたぼたと床に垂らす。
「「「「「っ‼」」」」」
「これは悪魔の実の能力で。一生金槌になる代わりに手に入れられる能力。」
「あくまの実?」
「うん。とても歪な形をした果実で味はこの世の物とは思えないほど不味いわ。実を食べるとこんな風に能力が使えるようになるの。あたしの世界では高額で取引されるてるの。」
神流は手を水に変えて見せる。それと同時に神流の瞳の色が変化する。
「っ‼どうなってやがる?それにお前その目‼」
「「「っ‼」」」」
「驚いた?私は水を自由に操ることができる水人間。水分ならどんな物でも操ることが出来る。この目は能力を使ったり興奮すると変わっちゃうの。あの夜あんた達の前から消えたのは奇術でもなんでもない。ただ自分の体を人には見えない水の粒子に変えたからよ。」
「総司や斎藤がお前が羅刹に斬りつけられてたって聞いたんだが。」
「あぁ。それね。私は体が水だからそういう物理攻撃は聞かないの。斬りつけられたり拳銃で撃たれたり砲弾に潰されたりしてもあたしには効果がないわ。」
「無敵じゃねーか‼」
「まぁそういうことね。この世界だったら私を殺す事はほぼ不可能ね。」
「山崎がお前に睨まれて気絶したのはその能力か?」
「それはまた別な物ね。彼を気絶させたのは…うーん。あんた達の言葉で言うと殺気ってところかな?」
「殺気?」
「うん。殺気を送って相手を怯ませ気絶させる。」
「そんなことできんのか⁉」
「えぇ。今あんた達全員気絶させる事もできるわ。」
そう言った瞬間その場にいた土方以外のもの達は皆それぞれの刀に手を掛けた。
「やだなー。冗談だよ冗談。此処まで話しておいて今更逃げるなんてことしないよ。」
信用されていないのか今だ刀に手を掛けたままだ。鋭い殺気も向けられる。
「ほんとだってー。」
「お前ら刀から手を離せ。話が進まねぇ。」
土方が言うと皆渋々武器から手を離した。
「で、私から提案なんだけど。此処に置いてくれないかな?恥ずかしながら寝床がなくて。」
あはは。と言いながら後頭部に手を当てながら言う。
「「「「はぁーーーーーー⁉」」」」
少しの沈黙の後の盛大な叫び声。みんな揃って仲がよろしいこと。
「お前それ本気で言ってんのか。」
「本気本気。それにあたし見ちゃいけない物見ちゃったんでしょ?正確には襲われたんだけど。」
見ちゃいけないものそう言った瞬間ビクリと土方の方が揺れる。それとほぼ同時に眉間に皺がよる。緊迫した状態に戻ったが、土方は溜息をする。
「はぁー。とりあえず此処で話をしても埒があかねぇ。俺の独断で決定していいもんでもねぇからな。近藤さんと山南さんが帰ってくるまでお前のことは保留にしとく。」
「はぁーい。ラッキー寝床確保。」
「斎藤。こいつを雪村の隣の部屋に案内してやれ。」
「御意。ついて来い星川。」
「わーい‼ありがとうございます‼」
完全にお遊び気分の神流に幹部達はそれは大きな大きな溜息を吐いたのでした。